日時:2012年6月17日(日)~22日(金)
場所:フロリダ州オーランド
獄中のマドフへのインタビューをつづった"The Wizard of Lies(嘘の魔術師),"の著者 Diana Henriques氏は、初日のオープニングセレモニーで基調講演を行った。
「ポンジースキームを予防・発見するのに、何も周りの不審な人全員から守るシステムが必要なわけではありません。自分が最も信用する人から自分を守るシステム(術)が必要なのです。その最も信用する人々が、最も信用する人々こそが、ポンジースキームへ誘惑するのですから。」
Henriques氏によると、人間が生まれながらに持つ相手を信頼する本能と、誤った(ill-placed) 本能的直感の組み合わせにより、マドフの巨額不正事件を隠してしまうほどの盲点を自分の中に作り出してしまう。
彼女はニューヨーク州の、とあるチャリティー団体を例に挙げた。当団体は、投資の際には、証券保管機関などの独立した第三者機関を利用していない投資管理者には投資をしてはならない、という規則を設けていたため、その規則を満たしていないマドフには投資をしなかったという。
その団体は、マドフが不誠実であったことを疑っていたわけではなく、「人は誤りを犯すものだ」と理解し、それに基づく合理的な規定を設けられていたからこそ、トラブルに巻き込まれずに済んだのです。
セッションにおいて、ACFEはHenriques氏に、今回初めてとなるガーディアン賞(Guardian Award)を授与した。ガーディアン賞は真実を追求することを決断し、維持、コミットした不正の分野および不正と闘う世界的な取組みに焦点をあてることでACFEの活動に大いに貢献したジャーナリストを称え、贈られます。
マドフは、Henriques氏にポンジースキーマーに共通する特徴を打ち明けたという。「ポンジースキーマーは、相手を信用させることができるのです。マドフの言葉を借りるとすれば『誠実な人、を完璧に演じることができる人』なのです。真実とは、諸刃の剣です。悪事を働く魔法使いから身を守るための魔法の呪文は疑念を抱くことではなく、謙虚さを持ち合わせることです。ポンジースキームに抵抗するためのシステムや文化の構築は電源入切のスイッチのようにはいきません。魅力的な話を持ち出してくる信用できそうな魔法使いを目の前に、『断る』選択肢を当事者に与えないのです。マドフの証言を元に教訓を得ましょう。文明社会において規制撤廃の許容範囲にも限界があります。政治的立場にかかわらず、規制力の低下を、ひどく後悔する日がくるでしょう。最悪の事態に遭遇することなく、ビジネスの闇の部分をやり過ごせると思い続ける限り、或いは投資家保護の改善に真剣に取り組まなければ、次のバーナード・マドフが現れ、同じことを繰り返すでしょう。」