日時:2012年6月17日(日)~22日(金)
場所:フロリダ州オーランド
米国フロリダ州オーランドの素晴らしい天候の中で、第23回ACFE年次総会が開幕しました。
欧州で顕在化している金融危機によって世界経済の先行きが不透明感を増しているなかでも、企業不正は止まることを知りません。今年も過去最高となる2,300名のACFE会員が世界各国から参加しました。早朝から250台の円卓が並ぶ巨大会場に集合したCFEたち、恒例となった60か国の国旗の入場に続いての開会宣言は壮観でした。
ACFE役員のスピーチの中でも出色だったのはACFE創始者であるウエルズ博士(Dr. Joseph Wells)でした。高齢にもかかわらずCFEの果たすべき貢献についての力説には多くの会員が心を揺さぶられたことでしょう。
今年は会議の内容や資料がモバイルのアプリケーション化されたので、印刷物が減らされて、多くの会員の会場でタブレットやスマートフォンの画面を見ながらの参加が特徴でした。
別室での民間企業、政府機関、大学等のブースの出展も過去最高の数となりました。写真は、普段はACFE本部に展示されている様々な過去の不正に関する歴史的展示物「不正博物館(Fraud Museum)」のうち、2001年に大規模な粉飾決算の発覚から連邦破産法の申請に至ったエンロン・コーポレーション(Enron Corp.)の株券です。
開会式に続く朝の基調講演はニューヨーク・タイムス紙のシニア・ファイナンシャル・ライターであるダイアナ・ヘンリク(Ms. Diana Henrique)記者です。同記者は、バーナード・マドフ事件について書いた『嘘の魔術師(The Wizard of Lies)』の著者でもあり、紙面ではエンロン事件やヘッジファンドLTCMの失敗に関する事件を含むホワイトカラー犯罪や証券市場の規則と企業統治について調査報道をして、数々の賞を受賞している有名なライターです。NYタイムス紙で史上最大のポンジー・スキーム(Ponzi Schemeネズミ講型投資詐欺の通称)を行ったマドフ氏が彼女だけに許していたインタビュー記事で有名です。世界中のアナリスト、会計士、デューディリジェンス調査担当の弁護士、ヘッジファンドや年金基金などの機関投資家を、長期間に渡って騙し、マドフ投資について例外扱いとさせた同氏がいかに魅力のある、人を信じ込ませる才能のある犯罪者であった彼を「天才」という言葉を使って語りました。不正の防止と発見にかかわる者は、「信頼」が両刃の剣であることを肝に銘じ、懐疑心を失ってはならないと強調しました。
予算削減によるSECの市場の監視人(Watch Dogs)としての弱体化についても警鐘を鳴らしていました。
なんと13もの部屋に分かれての午前中の分科会は、Mr. Patrick Risch, CFE, CIA, CCSAによる「不正リスク管理に関する不正防止ライン3層の責任(Managing Fraud Risk: First, Second or Third Line of Defense Responsibility?)」に出席しました。
企業不正リスクを防止する現場の管理者、リスク管理部、そして内部監査の3層に関する曖昧になりがちな各層の責任に関して、不正リスク評価、防止、早期発見、不正事件への対処、そして是正措置という企業不正リスク管理のプロセスから丁寧に論じたものでした。特に、リスク管理部こそが、組織がさらされている不正リスクとそれに対応する抑止策を経営者に提言できるので、第2ラインの不正防衛線を作り出すことの重要性、そして3層の協力が必要であることを強調していました。
ランチ・セッションにおける基調講演は、オリンパスの元社長であったマイケル・ウッドフォード氏(Mr. Michael Woodford)です。最初は朝の基調講演が予定されていましたが、ランチ・セッションの方が長く講演時間を取れるので急きょ直前に講演の順番を差し替えるほどの力の入り方でした。
講演内容は著書『解任』に描かれた彼が30年勤続したオリンパスでの2011年に起きた社長就任から東京地検による捜査に至るまでのストーリーの紹介でしたが、話しが上手で大受けしていました。写真は(右から)、ACFE法人会員であるJA三井リース株式会社の内部監査部の古瀬様、植田部長様、濱田、中外製薬株式会社の内部統制評価グループの半田マネージャー、米国在住のCFE、Mr. Jun Iwataと一緒にランチ・セッションにおいて撮影したものです。
午後の分科会は、まずはMs. Shuruti Shah, CFE, CTA, CAによる「リスク管理とコンプライアンス:大局に立って、ドッド・フランク法922条に関するコンプライアンス問題 (Risk Management & Compliance: Looking at the Big Picture, Compliance Challenges with Dodd-Frank Section 922)」に参加しました。
同条は、米国証券取引委員会(SEC)に対する告発者へ支払われる100万ドル以上の罰科金の10% - 30%というインセンティブを規定しています。特に、連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)関係の違反で巨額の解決金が支払われる事例が出ています。 ベスト10の6位には日本のJGC Corporationの$218.8 Millionの支払がリストされています。司法取引になる場合、会社がいかに腐敗防止に関してのコンプライアンスと不正防止のプログラムを持っているのかが司法判断の大きな鍵になると強調していました。
年次総会初日(6月18日)の晩に、ジェームス・ラトリーACFE会長主催のプライベート・レセプションに招待されました。本部や各国からの役員とお話しをした後に、本総会の基調講演者の1人であるマイケル・ウッドフォード元オリンパス社長とお会いすることができました。
ACFE Japan理事長 濱田眞樹人