執筆者:Lin Danwan, CFE
Venmo、Cash App、Alipay、WeChat Payのような第三者事業者による電子決済は我々の日常生活に広く浸透している。特に新型コロナウイルスが蔓延しステイホームを強いられたことで第三者決済が急激に増加している。断っておくが、銀行が運営するモバイルバンキングアプリや決済アプリについて取り上げているのではない。消費者、販売業者、銀行を独自に繋ぎ支払いのループを作るアプリに着目したい。
このような支払い方法は消費者に利便性をもたらし、取引はより効率的かつ柔軟に行えるようになる。しかしこうしたモデルは犯罪を行うコストと時間を削減し、資金の流れのルートを強化できる。関連するマネーロンダリングのリスクを見逃してはならない。
これらのリスクを理解するために、第三者決済の流れと、反復的なマネーロンダリング対策とそれらを実装するための課題を考える。
決済プロセスは通常5つの機能を含んでいる。
例として、第三者決済の取引プロセスを見てみよう。次の図は一般的な決済モデルのお金の流れを図示したものだ。
ここに示されているように、独立した第三者決済事業者が支払いのループを構成している。特に第三者決済事業者がユーザーの決済を処理するために金融機関に預金勘定開設の関係にある場合には、決済機能を引き受けているも同然だ。第三者決済事業者のアカウントは金融機関が明確に把握できない事実上の内部口座となる。
次のように考えてみよう。決済プロセス全体をいくつかの領域に分けてみる。
通常我々が第三者決済事業者と共にマネーロンダリング対策に取り組もうとすると、いくつかの困難に直面する。
従来、お金が移動するには特定の手順を踏む必要があり、それによって金の移動がある程度制限されてきた。第三者決済はこのような手順を簡素化する。つまり金は即座に貸方と借方に記録されて犯罪取引1件あたりのサイクルが短くなる。同時に、迅速な資金移動は不審な取引を傍受する時間を与えない。
詐欺師は、資金移動を繰り返したり、金の流れを複雑にしたりして追跡できないようにする傾向がある。こうした行為は取引監視システムを阻害して不審な取引を大量のデータに隠す。
ここ数年、第三者決済サービスのベンダーを利用したマネーロンダリングは、様々な団体や管轄区域を巻き込み、相乗的かつ専門的になり標準化されてきた。また決済モデルは企業間や管轄区域ごとに異なることに注意が必要だ。リスクコントロールの手段は異なる程度の有効性を生み出す。法域によっては、規制基準、規制対象者の管理の有効性、顧客の利便性の調整を図るのは容易ではない。
規制当局は市場参加者に対して金融包摂のための革新的な取り組みを進めるよう推奨している。バランスが取れていて負担にならない規制の確立が急務だ。規制ガイダンスと当事者の管理も、開発機会とリスクとの間でより良く適応して進化できる。最も差し迫っていて最初に取るべき行動は次の側面に基づいている。
このようなマネーロンダリング対策は取引プロセス全体を通して綿密に実施されるべきである。現在マネーロンダリングリスクの低減は、第三者決済事業者の利用規約の中でも曖昧さが見られるうえ、マネーロンダリング対策や本人確認では全く言及されていない。これは責任の解釈が決済システムや管轄区域によって異なるためだ。
しかし支払いのループの中で、特に資金移動の情報の注意喚起としてアカウント情報を記録している当事者がマネーロンダリング対策の責任を負うべきである。第三者決済サービスの提供者がこの考え方を採用すれば、包括的な監視と分析に繋げられるだろう。
CFEのLin Danwanはマネーロンダリング対策と不正リスクマネジメントの経験がある。彼女は現在銀行の金融犯罪部門に勤務している。彼女の現在の研究対象は、RegTechアプリケーションと新興国におけるマネーロンダリング対策の比較研究だ。現在は香港に拠点を置き、英語、中国語、広東語、フランス語が堪能だ。
英文タイトル :Common Money Laundering Risks With Third-Party Payments
英文記事リンク:https://www.acfeinsights.com/acfe-insights/money-laundering-risks-third-party-payments
原文掲載日:2021年3月26日
翻訳:ACFE JAPAN事務局
※わかりやすさを優先させるため、意訳を行っています。ACFE JAPAN (一般社団法人 日本公認不正検査士協会) 公式の邦訳とは異なる表現を使用している場合があります。