執筆者:Rebecca Dunne
原文掲載日:2020年11月19日
組織における典型的な不正は、会社の物品を業務外で利用したり、会社の資金を不正に流用したり、会社の経営が実際よりもうまくいっているようにみせかける財務諸表の虚偽記載がある。
ACFEが2年に一度公表している“Report to the Nation”(日本語版『職業上の不正と濫用に関する国民への報告書(2020年度版)』)によれば、従業員が100人以下の組織の方が、大企業に比べて損失の中央値が高くなっている。不正は組織の大小にかかわらず、どの組織でも起こりうる。従って、不正のサインを見逃さないことが重要である。(“Report to the Nation”英語版はこちら)
警戒すべき不正のサインとはどのようなものか、考えてみよう。
予算を下回ったり上回ったりしている支出や、支払いが期日どおりに行われないことは、深刻な不正の表象である恐れがある。確認すべき点は次のとおりだ。
残念ながら、あまりにもうまくいっているように見える状況は、警戒すべきサインかもしれない。もし、売り上げが通常を上回っている、あるいは収益が予想を上回っているのならば、その裏には会計処理の粉飾があるかもしれない。事業所が事業用の銀行口座を一つ以上持っているならば、不適切な現金の移動があるかもしれない。
やるべきこと:定期的に監査を実施する
通常はあり得ないようなメールを受信したり、組織の業務フローに合致しないようなメールは、詐欺が行われていることの証左かもしれない。あるいは、従業員のメールアカウントが何者かに乗っ取られているのかもしれない。ACFEが公表した “Fraud in the Wake of COVID-19: Benchmarking Report” の2020年9月版では、調査に回答した不正対策の専門家のうち83%が、新型コロナウイルスの大流行が始まってからサイバー攻撃による詐欺の増加に懸念を示している。
やるべきこと:従業員へのサイバーセキュリティートレーニングを強化する。特にフィッシングメールへの理解を深め、企業のインターネットポリシーを在宅勤務に適用させる。
もしスタッフが新しい内部統制のシステムに抵抗する意思を見せているのなら、彼らが何かを隠していて見つかりたくないと考えているのかもしれない。もちろん、変化を好まなかったり、業務プロセスの追加に対する抵抗は、よくあるものだ。しかし、その奥に何かが隠されているかもしれない。
やるべきこと:新しい内部統制に難色を示す従業員と1対1で対話をするための機会を設ける。彼らの抵抗の根拠を理解し、彼らの視点で問題を解決する。
不正リスクの高い従業員は、財務や購買部門で信頼を得ている人物だ。会社の資産を扱える人々は、そうではない人々に比べて不正を犯す機会があるということだ。もしこのような人物が極端に親しい人間関係のグループを作っていたり、極めて不正リスクの高い人物を中心に小さなグループが構築されていたら、それは不正のサインかもしれない。
キックバックを得るスキームでは、従業員は過大に請求してくるベンダーとも関係を持っている恐れがある。ベンダーが過大請求した金を山分けしているかもしれない。
やるべきこと:従業員同士の関係を監視する。通常ではありえない親密な人間関係を持つ人々には、プロ意識を持ち、全員を公平に扱い、偏向しないように諭す。
この領域は容易に不正を行える。もし企業側がこのような経費を注視し、監査しなければ、従業員は経費を水増しして請求する恐れがある。例えば、従業員は毎月のビジネスランチの経費を上乗せして請求することも可能だ。
キックバックを得るスキームでは、従業員は過大に請求してくるベンダーとも関係を持っている恐れがある。ベンダーが過大請求した金を山分けしているかもしれない。
やるべきこと:全経費を監視する内部統制を確立し、経費が正当な業務の範囲であることを調べる
予期せぬライフイベントのために、残業したり仕事の予定を変更しなければならない事態はよくあることだ。当然、コロナ禍で日々の業務予定がぐちゃぐちゃになり、元通りの状況に戻れていない人も多いだろう。しかし、もし普段とは違う行動パターンが出てきたら、注目したほうがいい。次に挙げる点は、注意を払うべき行動だ。
やるべきこと:従業員に、普段とは違う行動について、正当な根拠を示させる。このような要求が行われたら、最後まできちんとフォローアップする。例えば、もし従業員が報告書を完成させるために残業をしたいと要求してきた場合、報告書の確実な完成を確認する。
同様に監視カメラを活用したり、細部まで監査を行う。
もし従業員が高額な買い物をしていたら――新車や家の購入、豪華なバカンスなど――、彼らの給料に見合った額かを考えてみよう。給料だけで買えるのか? 当然、高額の買い物について説明できる正当な状況はあるだろう――給料を貯金していたとか、賭けごとで勝ったとか、家族からの相続などだ。だが一般的には、高額の買い物という出来事は、給料だけで購入できた買い物なのか疑うきっかけになる。
やるべきこと:上記に挙げた不正のサインがないか評価・調査する。もしあれば、しっかり細部まで調査する。
不正のサインに直面した時、よく観察することが重要だ。必要があれば、組織はさらに綿密に調べる必要があるだろう。なぜなら、不正はどんな組織にとっても莫大な損失をもたらすからだ。
Rebecca Dunne は、University of Hertfordshireの経営学部の学生で、2000年に設立されイギリス国内で倒産実務家としてライセンスを受けているKSA Groupのライターです。KSA Groupは、事業運営に悩む人々のために有用な2,000ページ以上の情報を含む Company Resque を運営しています。Rebeccaとは、Linkedin でコンタクトできます。
英文タイトル :7 Warning Signs That May Indicate Fraud Within Your Company
英文記事リンク:https://acfeinsights.squarespace.com/acfe-insights/7-warning-signs-that-may-indicate-fraud-within-your-company
翻訳:ACFE JAPAN事務局
※わかりやすさを優先させるため、意訳を行っています。ACFE JAPAN (一般社団法人 日本公認不正検査士協会) 公式の邦訳とは異なる表現を使用している場合があります。