2021年の仮想通貨をめぐるリスク予測
2021年2月16日「Love Fraud」が解き明かした結婚詐欺の卑劣
2021年3月3日
執筆者:Ron Cresswell, J.D., CFE, Research Specialist
原文掲載日:2021年1月8日
2020年10月、アメリカ財務省の金融犯罪取締ネットワーク局( FinCEN )がコロナ禍における失業保険( UI, Unemployment Insurance )に関する勧告[PDF]を発出し、コロナ禍に関する失業保険金不正の手口や不正の兆候を金融機関の関係部局に対して通知した。
失業保険金不正のよくある手口
コロナ禍で失業者の申請が殺到しているのは明らかだ。FinCEN によると、アメリカ国内の法執行機関や金融機関は、失業者の増加に比例して失業保険金不正が増加していることを把握している。次に紹介する不正は、コロナ禍でFinCENが監視している失業保険金不正のよくある手口だ。
- 架空の雇用契約:既存の企業または架空の企業で働いていると偽って申請し、架空の賃金の記録を提出する
- 雇用者と従業員が共謀:雇用者は簿外の減額した賃金を支払い、従業員は失業保険金を受け取る
- 所得の不実表示:失業後再び働き始めてからも失業保険金を受け取り続けて収入について嘘の報告を続けるか、収入を高く偽ってより高い失業保険金を受け取る
- インサイダー不正:政府機関に勤務する者が、受け取り資格のない申請者を承認したり、違法な支払いを認めたり、失業保険の資金を資格のないアカウントに移す
- 個人情報に係る不正:盗まれた個人情報や、偽の個人情報を使って失業保険金を申請する
失業保険金不正の可能性がある10の不正の兆候
FinCEN は、各金融機関に失業保険金不正の兆候をリストにして注意を呼びかけている。
次のような状態の口座
- 受給者が転居したか、働く場所が変わったなどとされている別の州から申請
- 複数の州から申請された同一期間内の申請
- 口座名義人以外の人物からの申請や、受給者が複数人になっている申請
- 現金手渡しや小切手などで受け取っている定期的な収入に対する失業保険金申請
- 多額の預金や銀行振込がある口座は、口座名義人以外の人物が、失業保険金を一つ以上の州から受給している可能性がある
- 同一支払期間で似た状況の人が受給している金額より高額な失業保険金
- 失業保険金を一括で銀行小切手に変えたり、プリペイドのデビットカードを購入したり、州外の口座へ送金している受給者
- 振り込まれた失業保険金が即座に海外の口座に送金されているケース、とくにマネーロンダリング対策が脆弱な国への送金
- 受給者が P2P( 個人間送金 )アプリケーションで失業保険金を受け取ったり送金したりしている。資金は海外の口座に送金されるか、デビットカードを使って引き出されるなど、同じような状況の受給者とは異なる金の移動がみられる
- 失業保険金が即座にオンライン請求書の支払いとして引き落とされ、その請求書の支払先が企業ではなく失業保険金を申請した個人になっている。請求書の受取人が、短期間のうちに複数のオンライン請求書の支払いを受けている
- 受給者のIDや失業保険金を申請した場所と異なる場所のIPアドレスからログインしている口座は失業保険金不正の疑いがある
- 休眠会社やダミー会社の口座に失業保険金を電信振替したり、失業保険小切手を入金している者
- 同一のフリーメールアドレスにひもづけられ、一つ以上の金融機関から失業保険金の支払いを受けている複数の口座は、1件以上の失業保険金申請をしている可能性がある
- 新規に開設した口座か、開設してから30日以内の口座に多額の失業保険金が入金されている。金融機関が追加の個人情報に関する書類を要求すると不正確な書類や偽造された書類が提出される
- 金融機関が、失業保険金不正が疑われる者に対してデューデリジェンスを実施した結果、失業保険金小切手やデビットカードの送付先に指定された住所や登録されたデビットカードが使用された地域に居住歴などの関連がない者
失業保険金不正の報告
FinCEN の勧告によれば、失業保険金不正だとすぐにわかるような不正の兆候はない。金融機関は、不正が疑われる申請だと結論を出す前に、きちんと事実確認をしなければならない。もし金融機関が失業保険金不正と結論を下したのなら、SARs( Suspicious Activity Report 訳注:金融機関から FinCEN に報告が義務付けられている疑わしい取引の報告)に記載されなければならない。この勧告は、SARsがコロナ禍での失業保険金不正の撲滅に不可欠だとしている。
翻訳:ACFE JAPAN事務局
※わかりやすさを優先させるため、意訳を行っています。ACFE JAPAN (一般社団法人 日本公認不正検査士協会) 公式の邦訳とは異なる表現を使用している場合があります。