一般社団法人日本公認不正検査士協会:理事長 藤沼 亜起 (ふじぬま つぐおき)
令和2年の新春を迎え、謹んでご挨拶を申し上げます。
会員の皆様方におかれましては、平素より一般社団法人日本公認不正検査士協会の活動にご理解とご協力を賜り、誠にありがとうございます。心より御礼申し上げます。
昨年は 30 年続いた「平成」の時代から、「令和」の時代へと御代替わりとなった、私たち日本人にとっては節目の年となった年でありました。新たな元号となった「令和」は、万葉集からの出典だといいます。
「時に、新春の令月にして、気淑よく風和ぐ。梅は鏡前の粉を披き、蘭珮はい後の香を薫らす」
万葉学者として名高い中西進氏はこれを次のように現代語訳されています。
「時あたかも新春の好き月、空気は美しく風やわらかに、梅は美女の鏡の前に装う白粉のごとく白く咲き、蘭は身を飾った香の如きかおりをただよわせている」
つまり「令」は良き、「和」はやわらか、を意味しています。繊細な情感の世界を感じます。1200 年余り前に編纂された万葉集は、天皇から貴族、農民に至るまでの、様々な階層の人々の歌を集めた歌集だといいます。悠久の歴史と世界に誇るべき日本の文化を感じずにはいられません。
その誇るべき文化を持つはずの日本で、不正や不祥事が止まりません。昨年も多くの一流企業や官公庁の不祥事や不正事件がメディアを賑わせました。止むことを知らない不正事件を目の当たりにして、わたしども日本公認不正検査士協会が果たすべき役割をあらためて認識しています。
ACFE が不正対策の専門家に認定している CFE (公認不正検査士) 資格の取得者は、日本国内だけでも昨年末の時点で 1,410 人となりました。公認不正検査士は、不正の発見や未然防止・抑止に関して重要な役割を担っています。これからもなくなることはないであろう不祥事や不正事件に対して、第一線で対峙する公認不正検査士は、まだまだ不足していると思います。
わたしども日本公認不正検査士協会では、今後もさらに有資格者を輩出していくと同時に、日本の市場にあわせた不正対策教育の実践プログラムを開発しなければならないと感じております。
また、企業内において、組織を挙げて不正対策に取り組む土壌や風土を醸成する環境づくりや同業者によるネットワークの構築も重要だと思っております。
お蔭様で、日本公認不正検査士協会は 2005 年の活動開始以来、今年で 15 年目を迎えます。会員も 2,150 人を超え、徐々に認知度も高まってきました。日本公認会計士協会が不正対策の重要性を提言している中、私たちの役割もより重要になっていくと思われます。今後も会員の皆様のお役に立てる協会づくりを目指してまいりますので、引き続きご支援ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
末筆ながら、会員皆様方のますますのご多幸とご発展をお祈り申し上げまして、年頭の挨拶とさせていただきます。
ACFE JAPAN 理事長
公認不正検査士 (CFE)、公認会計士
国際会計士連盟 (IFAC) 会長 (2000-2002)、日本公認会計士協会 会長 (2004-2007)、IFRS 財団 評議員会 (Trustees) 副議長などを歴任。