34th ACFE Global Conference : 「不正実行者との会話」Closing General Session:Billy McFarland, John D.
2023年7月7日35th ACFE Global Conference : 1日目
2024年6月26日
2023年10月11日(水)、12日(木)に「第14回ACFE JAPAN カンファレンス」を開催しました。DAY1は、3年ぶりに会場参加を復活させた昨年に続き、ハイブリッド(会場参加+オンラインライブ+後日録画視聴)、DAY2は事前収録録画視聴の開催となりました。DAY2では一部プログラムを選択制とし、少しでも異なるニーズに対応できるよう例年より多くのプログラムを用意しました。
開会挨拶
岡田譲治 氏(一般社団法人 日本公認不正検査士協会 理事長)
日本で2005年にACFE JAPANが活動を開始して19年目。企業内におけるリスクマネジメントや不正対策の意識の高まりを受けて、会員数は2900人を数え、公認不正検査士(CFE)の数も2000人を超えたことが報告され、不正の概念や行為の多様化・複雑化・グローバル化が進み企業が対応に追われる中、協会として会員に実務面のフォローアップを行う一方、公益組織として社会に対して警鐘を鳴らすことも責務である旨を語っていただきました。
基調講演「市場の公正性・透明性の確保と投資者保護の実現に向けて」
橋本尚 氏(証券取引等監視委員会 委員)
市場環境の大きな変化の中で、市場に対する幅広い監視、課徴金調査・開示検査や証券検査といった行政機能の迅速な発揮、重大・悪質な事案に対する厳正な対応といった証券監視委の機能に触れたうえで、今の証券取引を取り巻く環境や不公正取引および開示規制違反の傾向も紹介しつつ、金融商品取引業者等に対する証券モニタリングなどの証券監視委の活動状況についてご説明いただきました。
新旧理事長対談「企業不正に立ち向かう監査役等と会計人に求められるスキルとは?」
パネリスト:
岡田譲治 氏(一般社団法人 日本公認不正検査士協会 理事長)
藤沼亜起 氏(一般社団法人 日本公認不正検査士協会 前理事長 現評議員)
モデレーター:玉井裕子 氏(一般社団法人 日本公認不正検査士協会 評議員)
パンデミックが収束する一方、地政学リスクの高まりや業務のデジタル化など新たな環境が生じる中、企業の不正行為、不正会計、経営者らによる企業の私物化、不適切な金品授受や汚職、さらに品質偽装やハラスメントなど、企業・大組織の不祥事が絶えることのない昨今。本プログラムでは今年6月に交代した当協会の岡田譲治理事長と藤沼亜起前理事長(現評議員)が登壇し、弁護士の玉井裕子氏(評議員)をモデレーターとして、監査部門や内部統制部門のスタッフ、ひいては公認不正検査士(CFE)が企業不正や不祥事にどのような姿勢や覚悟をもって挑むべきか、対話形式でディスカッションしてもらいました。
岡田理事長は、三井物産において副社長CFO(最高財務責任者)ののち、2015年には常勤監査役に就任。2017年から2019年まで公益社団法人日本監査役協会会長を務めた経験をもとに、「監査役等は経営者や執行部に対する“最後の砦”ともいうべき存在であり、いざというときは経営陣と対峙する覚悟が必要」との信念を語っていただきました。
一方の藤沼前理事長は、50年以上にわたって公認会計士として企業監査に関わり、その間、国際会計士連盟(IFAC)会長、日本公認会計士協会(JICAP)会長など数多くの公職を歴任した経験をもとに、特に会計人に求められる資質を語っていただきました。
特別講演「不正リスク対応に向けてガバナンスが果たす役割」
荒張健 氏(EY新日本有限責任監査法人 アドバイザリーサービス本部 Forensics事業部 パートナー 公認会計士)
国内部統制基準が改訂され、経営者の評価範囲の決定においてリスクアプローチの徹底が求められるとともに、これに伴う内部統制の基本的枠組みの変更により、不正リスクや経営者等による内部統制の無効化リスクへの対応も考慮することが必要となった昨今。そのような期待にガバナンスはどのようにして経営執行に対する監視・監督の機能を果たしていくべきかを語っていただきました。
スペシャルゲスト講演「組織を守るために~リスクマネジメントと非上場化」
大﨑洋 氏(大阪・関西万博催事検討会議 共同座長/元 吉本興業 会長)
吉本興業(現吉本興業ホールディングス)は、かねてから数パーセントの株を保有する創業家からの圧力と、反社会的勢力による嫌がらせ、それと連動したメディアの一方的な批判、加えて会社内部からの情報リークやさまざまな誤情報の流布などに悩まされていました。そうした中、社長に就任した大﨑氏は恒久的な問題解決策として、2009年に非上場化の道を選択しました(翌10年2月上場廃止)。講演では、非上場化に至る会社の苦悩と経緯、その後、吉本興業がガバナンスとコンプライアンスを重視する社風へどのように転換してきたか、経営トップとして同社を率いてきた立場からお話しいただきました。
スペシャルゲスト対談「健全な組織運営のためのガバナンス」
大﨑洋 氏(大阪・関西万博催事検討会議 共同座長/元 吉本興業 会長)
八田進二 氏(一般社団法人 日本公認不正検査士協会 評議員会 会長)
日本随一のお笑い企業、吉本興業に半世紀近く身を置いた大﨑洋氏。マネージャーからサラリーマン人生をスタートさせ、果ては6000人の芸人・タレント、社員1000人を擁する巨大エンターテイメント企業の総帥として、黒子の立場から日本社会に多くの笑いを提供してきました。
単なる興行会社から脱皮し、新人タレントの養成所を立ち上げ、テレビ番組制作等で他の追随を許さない吉本興業ですが、その陰でリスクや問題が顕在化することも一度や二度のことではありませんでした。そのような中で問題解決に奔走してきたのが、大﨑氏に他なりません。
本セッションでは、こうした大﨑氏の貴重な体験を踏まえ、多くの企業や組織が学ぶべきリスクマネジメントの“本質”について、ACFE JAPAN評議員会会長の八田進二・青山学院大学名誉教授と対談いただきました。
いかに経営者としてリスクを察知して経営判断を下すかをはじめ、組織やトップの在り方、大阪・関西万博催事検討会議共同座長として一大イベントを成功に導く秘策、そして、これからの日本社会の進むべき道といった多岐にわたる内容を、八田会長と丁々発止のやりとりを交えながら、芸人顔負けの話しぶりで開陳。会場が笑いに包まれることもしばしばでした。
基調講演 2「AIと法-企業のガバナンスと内部統制に与える影響を中心として」
弥永 真生 氏(明治大学 専門職大学院 会計専門職研究科 教授)
大会社等は、その会社または企業集団の取締役・使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制などについて決定しなければならない。AI(人工知能)が有するリスクを念頭において、個人情報保護、競争法及び損害賠償法上の問題などをふまえた体制の整備が求められることが予想される。EUにおいて禁止されるAIまたは高リスクAIとされるようなAIとの関係では、とりわけ適切な体制整備が求められることになろう。
また、AIの利活用が経営判断原則や信頼の原則の適用に影響を与え、取締役会・業務執行者・監査役等の善管注意義務違反の成否に影響を及ぼすにとどまらず、AIを利活用しないことが善管注意義務違反であると評価されることが近未来にはあるかもしれない。
講演「ESG不正リスク対応の課題」
川原 尚子 氏(近畿大学 経営学部 教授、公認会計士、公認不正検査士、公認内部監査人、税理士)
近年、企業のESG(環境、社会、ガバナンス)に関するステークホルダーの関心が、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の利用拡大を背景に高まっています。この状況において、企業のESG関連の不正などの話題は、これまで以上に企業価値に影響する可能性があります。
そこで、ESGの企業リスクに関心の高い投資家はESGの情報を求めており、それを受けてESG情報の制度的な開示が国内外で急速に進んでいます。
この講演では、ESG情報の制度開示の状況を踏まえつつ、ESG不正やその要因は何かを学術的議論を通じて整理し、またESG不正のリスクを軽減するための考え方やアプローチをご紹介していきます。
講演「経済安全保障に関するグローバルコンプライアンスの実務~外国規制の域外適用リスクへの対応を含めて」
高橋 大祐 氏(真和総合法律事務所 パートナー 弁護士)
米中の対立やロシアのウクライナへの侵攻をはじめとする国際情勢の緊張の高まりや紛争の発生をふまえて、経済安全保障対応の必要性が共有されている。日本でも、経済安保推進法が施行されたものの、同法は経済安保対応を補強するための施策の一部を規定したものにすぎない。経済安保の概念は広範であり、関連する法規制には、経済制裁、輸出管理、投資管理、サイバーセキュリティを含む様々な分野の規制が含まれ、企業には統合的な対応が求められる。
また、米国政府等は、日本を含む外国企業に対しても様々な方法で積極的に経済安保関連規制を域外適用している。一方、中国・ロシア政府等も、米国規制等に対して対抗措置を取っており、日本企業は各国規制の間で板挟みになる状況下で最適解を模索することが求められている。
本講演では、このようなグローバルな視点から企業の経済安保に関する規制動向のポイントを概説した上で、その対応のあり方を議論する。
特別セッション 「グローバルサプライチェーンにおける人権デュー・ディリジェンスの実務」
清水 和之 氏(デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
フォレンジック&クライシスマネジメントサービス パートナー)
国際的な「ビジネスと人権」への高まる関心とともに、企業が人権問題にどう対処し、人権デューデリジェンス(DD)を検討しているかが焦点です。経済産業省の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」も登場し、人権DDの不可欠性が強調されています。このセッションでは、人権リスクの可視化から始まり、優先順位付けと計画的な対処、さらに不確実性と複雑性を乗り越えたリスク評価と対処について詳しくご紹介します。グローバルサプライチェーンマネジメントの未来に触れる絶好の機会です。
講演「暗号資産業界の健全な発展を見据えた取り組み」
安河内 誠 氏(一般社団法人日本暗号資産取引業協会事務局 参与)
暗号資産は、ブロックチェーン技術を用いて分散的に記録が管理されるデジタルの財産的価値です。暗号資産の利用は、金融システムのイノベーションに貢献する可能性がありますが、マネー・ローンダリングやテロ資金供与などの犯罪に悪用されるリスクや利用者の保護に関する課題も存在します。そこで、暗号資産の健全な発展を見据えた取り組みとして、法律や自主規制規則による規制が必要とされます。
暗号資産の法律上の規制は、資金決済法及び金融商品取引法により整備されています。これらの法律では、暗号資産の定義、暗号資産交換業者の登録制度や監督基準などが定められています。また、国際的な規制の枠組みであるFATF(金融活動作業部会)の勧告に沿って、暗号資産の移転に関する情報共有の義務が2023年に導入されました。
そして、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)では自主規制規則による規制を行っています。JVCEAは、暗号資産取引業者である会員に対して、取扱暗号資産の審査、不公正取引の防止やAML/CFTなどに関する自主規制規則を定めています。また、消費者への教育啓発活動や苦情対応なども行っています。
本講演では、暗号資産の健全な発展を見据えた取組みである法律や自主規制規則について、その概要や具体例を説明します。
講演「ハッカーが見破るサイバー犯罪・不正の証拠」
杉浦 隆幸 氏(一般社団法人日本ハッカー協会 代表理事)
暗号資産の普及に伴い、企業や組織はさまざまな問題や課題に直面するようになりました。特に、海外に子会社を持つ企業が、子会社の不正行為によって暗号資産を悪用されるリスクも増えています。本講演では、企業や組織の資産を保護するためにはどのような手段や戦略を採るべきか?ホワイトハッカーの存在や活用方法は何か?従業員のセキュリティ意識を高めるには何が必要か?などについてお話させて頂きます。セキュリティ対策において、ホワイトハッカーの活用や官公庁の動向についても紹介します。例えば、各企業がホワイトハッカーをセキュリティ対策に参加させる方法についても取り上げます。
さらに、セキュリティに関する一般的な話題から一歩踏み込んで、暗号資産の追跡や経験に基づくセキュリティ対策についても述べます。具体的には、ブロックチェーン技術を利用した暗号資産の追跡方法や、ホワイトハッカーが実際に行う活動について紹介します。
特別セッション「サプライチェーン上の人権リスクマネジメントとテクノロジーの活用」
平尾 明子 氏(PwCアドバイザリー合同会社 フォレンジックサービス ディレクター、公認不正検査士)
サプライチェーンの複雑さと国際化が進む中、企業は自社だけでなく、サプライチェーン上の人権リスクにも直面しています。このセッションでは、外国人労働者に対する強制労働を含む人権侵害の実例を解説し、その背後にある要因を明らかにします。物理的な処罰から脅しに至るまで、強制労働の多様な側面に焦点を当て、リスクの高い地域や業界も紹介します。テクノロジーを活用したリスク評価とモニタリング手法、さらに人権問題への早期対応プラットフォームについても触れ、絶えず進化する人権尊重の取り組みについて深く理解できます。
講演「認知バイアス~職業的専門家の客観性および倫理観に対する最大の脅威」
伍井 和夫 氏(公認不正検査士、公認内部監査人)
CFEの多くが、弁護士・コンサルタント・会計士等のいわゆる職業的専門家である。また、一般企業の従業員も在籍するが、内部監査・法務・コンプライアンス等の専門性の高い業務に携わっている者が多くを占め、概ね、職業的専門家の集団と言える。
一般論として、職業的専門家は高い水準での倫理観が求められているが、そこで最も厄介なのが客観性の問題である。なぜなら、ここで言う客観性は「偏りのない精神的態度」とされており、無意識のうちに判断に影響を与えるようなバイアスに対する適切な対応も含まれるからである。
例えば、最近の話題としては、2023年に入ってから米国の内部監査人協会(IIA)が提示している「(内部監査の)専門職的実施の国際フレームワーク」の改訂案がある。本講演では、このテーマからスタートして、認知バイアスの脅威と対応策について検討していく。
講演「CFEの不正調査実務における法律問題 Q&A~調査手法から調査後のリスク回避まで」
矢田 悠 氏(ひふみ総合法律事務所 弁護士、公認不正検査士)
神村 泰輝 氏(ひふみ総合法律事務所 弁護士、公認不正検査士)
近年、社会の耳目を集める不正事案が連日のように報道されるなど、企業の不正に対するステークホルダーの関心はますます高まっており、企業が不正調査の必要に迫られる機会は一層増加しています。一方で、重大な不正事案について調査委員会が設置される実務が定着し、調査結果がその後の種々の訴訟で利用されるようになったことに伴って、調査手続に関する法律問題が裁判所で争われる機会が増えてきています。
本講演では、このような現状を踏まえて、社内担当者や外部専門家として不正調査に携わるCFEの皆様に「不正調査の現場で使える一歩踏み込んだ法律知識」を持ち帰っていただくべく、①客観的資料の収集、②供述資料の収集、➂不正調査後の法的リスクの3部構成にて、不正調査の担当者が法的・倫理的に留意すべき点について解説を行います。
不正調査の現場で必ず直面する典型論点はもとより、新たに生じつつある論点や、近時の裁判例で争われた論点についても取り上げ、必要な情報にアクセスしやすいQ&A方式で解説いたしますので、多くの皆様のご参考になれば幸いです。
特別セッション 「不正リスク対応支援グループ(FRG)の挑戦」
黒川 義浩 氏(有限責任 あずさ監査法人 不正リスク対応支援グループ パートナー、公認会計士、公認不正検査士)
不正リスクへの挑戦に焦点を当てたセッションです。あずさ監査法人が専門部署不正リスク対応支援グループ(FRG)を設置し、クライアントに高付加価値を提供するための取り組みを強化しています。黒川義浩氏が不正リスクに対処する方法とその効果を紹介します。不正リスク対策に関心がある方々にとって、貴重な知識が得られることと思います。
特別セッション 「企業不祥事における委員会型調査の発展と課題」
眞武 慶彦 氏(長島・大野・常松法律事務所 パートナー 弁護士)
社会的関心の高い企業不祥事事案に関して、事実関係の解明や真因分析のために調査委員会が設置される実務は、日本において独自の発展を遂げて広く普及してきました。
その一方で、日弁連が策定したガイドライン以外に委員会調査の進め方に関する実務指針は少なく、同ガイドラインでは対処しきれない課題の指摘や、同ガイドラインに準拠しない委員会調査も増えています。
本講演では、調査委員会の運用実務における課題とその克服に向けた方向性を考察します。