2022年10月12日(水)、13日(木)に「第13回 ACFE JAPAN カンファレンス」を開催いたしました。DAY1はハイブリッド(会場参加型+オンライン)、DAY2はオンラインのみの開催と、コロナ禍の影響も鑑み、人数制限を設けて3年ぶりに会場開催も交えたカンファレンスとなりました。
藤沼 亜起 氏( 一般社団法人 日本公認不正検査士協会 理事長 )
ACFE本部が発表した「Occupational Fraud 2022: A REPORT TO THE NATIONS」(日本語版『2022年度版 職業上の不正に関する国民への報告書』)内で、世界的な新型コロナパンデミックの中で行われた不正とその調査が初めて行われたことに触れつつ、日本においてACFE JAPAN が時代のニーズを捉えた不正対策活動の普及と質の向上に寄与すべく尽力していく旨を語っていただきました。
廣川 斉 氏( 金融庁 企画市場局 企業開示課 課長 )
金融庁の「会計監査の在り方に関する懇談会」(2021事務年度)で行われた「会計監査の信頼性確保」・「公認会計士の能力発揮」・「能力向上、高品質な会計監査を実施するための環境整備等」に関する論点整理について解説いただいた後、会計不正の防止及び発見に資する金融庁の取り組みや今後の展望についてご紹介いただきました。
パネリスト:
茂木 哲也 氏( 日本公認会計士協会 会長 )
松野 正人 氏( 公益社団法人 日本監査役協会 会長 )
伏屋 和彦 氏( 一般社団法人 日本内部監査協会 会長 )
オブザーバー:廣川 斉 氏( 金融庁 企画市場局 企業開示課 課長 )
モデレーター:八田 進二 氏( 一般社団法人 日本公認不正検査士協会 評議員会 会長 )
社会の多様化に伴い複雑化する不正リスクの防止・抑止・発見に向けて三様監査への期待が高まる昨今。本カンファレンスは、関連3団体の会長が一堂に会して、それぞれの立場から三様監査が果たすべき役割について議論いただく初の試みとなりました。
3会長からそれぞれの団体における不正リスク問題への対応についてプレゼンテーションをしていただき、それらをふまえたディスカッションでは、不正を未然に防ぐためにも各協会間の協力関係が重要であるとの意見が交わされ、廣川氏からは監査制度の後押しができるよう制度担当としても努めていく旨が語られました。モデレーターを務めた八田氏からは、日本独自の三様監査の連携がシナジーを生み、我が国の監査制度をより良い方向へと導くことを願い、また当協会も不正に関する蓄積された知見を提供することで一翼を担っていければ、とまとめていただきました。
福原 あゆみ 氏( 長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士 )
国内外でハードロー化するデュー・ディリジェンスに関し、人権・環境リスクに関連する最近の紛争例を取り上げるとともに、サプライチェーンにおいて企業が求められる調査の留意点について概説いただきました。
鈴木 馨祐 氏( 衆議院議員、自民党企業会計に関する小委員会 委員長 )
国際的に社会環境の変化が求められるのに伴い、「新しい資本主義」の核心となる企業に対する従来の財務情報と非財務情報の開示の在り方に係る見直しや検討と併せ、政府がどのように不正・虚偽の防止に対応策を立てていくべきかについて解説いただきました。
宮内 義彦 氏( オリックス株式会社 シニア・チェアマン ) 藤沼 亜起 氏( 一般社団法人 日本公認不正検査士協会 理事長 )
宮内義彦氏と八田進二氏の著書『体験的ガバナンス論』を参考に、日本企業のガバナンスの現状と本来あるべき姿、そして、日本のコーポレートガバナンスの未来について対談いただきました。高度化していく社会に対し、組織におけるチェックアンドバランス等の体制づくりの重要性が語られました。現在のガバナンスの在り方に対する本音や「横に動ける人間になる」という企業人に向けてのメッセージなど、日本を代表する経営者である宮内氏の生の声を聞くことができる貴重な機会となりました。
真柳 元 氏( 公認不正検査士、公認内部監査人 )
不正リスクマネジメントの改善をしたい会社やこれから不正リスクマネジメントを始めようとしている会社、そして、具体的・実践的なガイダンスを求めている会社が利活用できるよう、ACFEが2020年7月に発表した“Anti-Fraud Playbook”について紹介いただきました。
竹内 朗 氏( プロアクト法律事務所 代表パートナー、一般社団法人 日本公認不正検査士協会 理事 ) 吉野 弦太 氏( のぞみ総合法律事務所 パートナー弁護士 )
不正調査の実務能力を高めたいCFE向けに、最前線で実務にあたってきた竹内氏、吉野氏の両先生より、社内調査や不正調査において関係者に「ヒアリング」する際の準備段階から現場で実際に起こり得ることなど、ご自身の経験談も交えた実務技法についてご提供いただきました。
辻 さちえ 氏( 株式会社ビズサプリ代表取締役、一般社団法人 日本公認不正検査士協会 理事 )
会計不正の端緒に気づくためにも、監査の手続きにおける「実査」・「実地棚卸」・「立会」の正しい知識を持つことが重要であることを、「棚卸資産の架空計上」や「循環売上関連の架空在庫」などの過去の不正事例を取りあげていただきつつ、解説いただきました。
荒張 健 氏( EY 新日本有限責任監査法人 Forensics事業部 パートナー )
不適切行為の発生メカニズムとして不正とミスコンダクトの関係性を明示いただいた後に、「EYグローバルインテグリティレポート2022」で報告されたインテグリティの動向から、経営者が不適切行為の起きにくい組織を作るためには経営者と従業員の信頼性を確保し、不正を把握するためにモニタリングを導入することが重要であると解説いただきました。
みんなで創る不正対応研究会
(1)246社対象:不正予兆管理実態調査報告-内部監査部門へのアンケート調査-
アンケート小部会 発表
日本内部監査協会のご協力を得て実施したアンケート調査の成果について報告いただきました。質問項目は、「各組織における不正の発見・不正リスクの把握」のために用いている仕組みや、その具体的な内容、導入の経緯など多岐にわたり、最後に「既に行われている不正発見の責任を事業部門・管理部門・内部監査部門がいずれも負っている」という認識を共有することが不正リスクの把握・発見のための情報共有・協働を促進するとまとめていただきました。
(2)上場会社における資産流用事案の手口と発覚の端緒等
資産流用事件分析小部会 発表
会社内の不正の予兆・兆候を効率的・有効的に把握できるよう、上場会社における会社資産流用事件の犯行手口、発覚の端緒等を調査・分析した成果について報告いただきました。公認不正検査士として、内部通報制度の整備や社内研修等、不正の予防と発見に努めるべきとの提言をいただきました。
中島 祐輔 氏( デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 フォレンジック&クライシス マネジメントサービス統括 パートナー )
デロイトトーマツが発行した「企業の不正リスク調査白書 Japan Fraud Survey 2022-2024 にみる最新傾向」から、コロナ禍前後における企業ごとの不正対策への意識・取り組みの傾向の変化等の調査結果をもとに、リスクを見える化し、危機感を共有することから始めるべきとの提言をいただきました。
結城 大輔 氏( のぞみ総合法律事務所 パートナー弁護士、一般社団法人 日本公認不正検査士協会 理事 )
改正公益通報者保護法とそれを受けた消費者庁指針・指針解説のうち不正調査の実務に関連する重要部分と公認不正検査士として通報案件の受付・調査・是正措置等に携わる実務家が留意すべきポイントについて解説いただくだけでなく、グローバルにビジネスを展開する企業における海外子会社・グループ会社でのコンプライアンス・リスクマネジメントの観点から、グローバル内部通報システムの構築・運用について個人情報の取扱いに留意すべきなどの考察をいただきました。また、本年9月に発足した「内部通報実務研究会」についてもご紹介いただきました。
志村 亜希 氏( PwCアドバイザリー合同会社 フォレンジックサービス マネージャー )
海外の贈収賄リスクについて反贈収賄および人権コンプライアンスの最新動向を、米国のバイデン政権以後の政策に焦点を当てて紹介いただきました。米国が警告している企業の摘発増加に向けて日本でも実効性のあるコンプライアンス体制の構築・定期的な見直し・強化が重要であることや、人権リスクへの取り組みの必要性について概説いただきました。
平尾 明子 氏( PwCアドバイザリー合同会社 フォレンジックサービス ディレクター )
冒頭で、企業買収におけるコンプライアンス デュー・ディリジェンスの重要性について紹介いただき、企業の事業成長の加速化のために企業買収は行われるものの、買収前にコンプライアンスリスクを適切に把握し、買収後に迅速に対応することが事業目的の達成には不可欠であるとまとめていただきました。
奈良 隆佑 氏( PwCアドバイザリー合同会社 フォレンジックサービス ディレクター )
「経済犯罪実態調査(Global Economic Crime and Fraud Survey)」の最新2022年度版の内容から不正リスクの時勢の動きの概観をふまえ、不正リスク管理とデータの利活用を通じ、変化や予兆を早期に把握して適切に初動対応すべく、不正兆候検知データ分析やグローバル通報プラットフォーム、メールモニタリング、そしてリスクアセスメント高度化などの取り組みが必要であると講演いただきました。
塩尻 明夫 氏(税理士法人 耕夢 代表社員、一般社団法人 日本公認不正検査士協会 理事)
税務ガバナンス(コンプライアンスやプランニング)に必須となる内部統制について解説いただいた後、旧来の事後対応型の税務から事前に税務に関するリスクをコントロールするガバナンスが重視されるように社会が変化しつつあると考察いただき、CFEが果たせる役割や課題について検討いただきました。