日時:2021年6月21日(月)~23日(水)
場所:オンライン開催
Robert Herjavec氏は、カナダ・トロントに本社を置くサイバーセキュリティー企業The Herjavec GroupのCEOを務めている。Herjavec氏は旧ユーゴスラビアの出身で、幼い頃に両親と共にカナダへ移り住み、新聞配達やウエーターなどをしながら大学を卒業した。その後、起業したIT会社を大手企業に売却して資産を築いた。現在はサイバーセキュリティーの専門家として活躍する一方、アメリカ版マネーの虎として人気を集める投資番組「Shark Tank」に投資家として出演して人気を集め、モチベーションアップにつながるビジネスアドバイスが様々なメディアで紹介されている。
Herjavec氏はコロナ禍で企業が直面するサイバー攻撃の危険性について、「サイバー攻撃の規模が大きくなったり複雑になったのではありません。攻撃を受ける面が広くなっているのです」としたうえで、自身の顧客である病院を経営している企業の例を紹介した。
「1万5000人の従業員のうち3500人がリモート勤務をしていましたが、コロナ禍で全従業員にリモート勤務を適用しました。しかし全員が万全なセキュリティー対策のもとで仕事をしていたわけではありません。PCを家族で共有したり、10代の子供が使ったり、電源を入れたままにして誰でも操作できるようにしていました。つまり、企業のネットワークへの侵入が容易になっているということです」と、在宅勤務の広がりによって脅威が増大していると警告した。
さらに、今年5月に5日間の操業停止を余儀なくされたアメリカの石油パイプライン大手コロニアル・パイプラインへのサイバー攻撃は、たった一人の従業員がフィッシングメールの添付ファイルを開いてしまったことが端緒だったことに触れ、このようなサイバー攻撃は今後も続くだろうとしている。
「我々の調査では、在宅で働いている人は警戒を怠ってEメールを開いてしまう傾向があることがわかっています。在宅では知り合いからのメールも読みますし、そういった環境のせいでしょう。しかし会社で働いている時と同じルールを守り、知らない人からのメールは開かないようにしなければなりません。」
カンファレンス参加者が最も警戒すべき脅威について問われたHerjavec氏は、「ランサムウエアの95%はいまだにEメールで送りつけられています。深刻な事態はヒューマンエラーから引き起こされているのです。皆さんへのアドバイスは二つあります。一つめは基本的なセキュリティーを確実にしておくことです。ファイアウォールを設置する、パスワードを定期的に更新することです。二つめは、情報を投稿する時には慎重になることです。Eメールで個人情報を返信する前に深呼吸してみてください」と呼び掛けた。
また、ここ数カ月サイバー攻撃の脅威に対応してきたIT分野のビジネスについては、「3カ月ごとに新しいIT技術が生まれ、脅威も生じています。それを追いかけることで我々のビジネスは成り立ちますし、また詐欺やサイバー攻撃をしようとする悪人がチャンスを得ることにもなります。しかし北米の人々はIT技術の力を信じています。IT技術で我々はもっといろんなことができるようになり、生産的になれるでしょう」と見通しを語った。
Herjavec氏はまた、コロナ禍で自身が得た学びを披露した。「現在の事業計画は毎日変わる可能性があります。ある日は経済が動いているけれども、別の日には止まっているから変更しなければ! といった具合です。それから、人生は不確実だということです。我々は適応しなければなりません。私は『Shark Tank』の出演者と、成功する人とそうでない人の違いについて議論しましたが誰も正しい答えを持っていませんでした。ただ一つ皆の考えに共通していたのが、優れた起業家は極めて適応能力が高いということでした。ジャングルの中に落とされようが森の中だろうが、どうやって生き延びるか考えなければなりません。」
さらに、今がビジネスを推進するべき時だとして次のように述べた。「トラブルに見舞われた時は素早く行動するべきです。新型コロナウイルスの大流行が始まった頃、人々は大きな決断を避けていましたし、現在もコロナが完全に収束するまで待っています。しかし私は大変強気に構えています。我々の生涯で最も経済が成長する時期の一つだと考えています。我々は今、全速力で前に進んでいるのです。」