日時:2015年6月15日(月)~17日(水)
場所:メリーランド州ボルティモア
有名な"60-Minutes"の共同編集者であるLesley Stahl(レスリー・ストール)は、仕事で担当した話題を他の人に話すことは滅多にない。しかし、6月16日火曜日のワーキング・ランチの基調講演は例外だった。
「私は[FinTech、つまり財務工学について]お話します。皆さんにとっても興味深い話題だと思いますし、私自身も我々がどこへ向かっているか懸念を抱き、考えさせられました」。
彼女は最近シリコンバレーに滞在したが、そこでは、ハイテク企業が実際にビジネスを「破壊している」。
「彼らは既存の産業を覆すような方法を追求しており、それを『破壊的創造』と呼んでいます」と彼女は語った。20世紀の半ばに経済学者のヨーセフ・シュンペーターがこの造語を創り出した。「彼はこれが経済の発展の原動力であり、資本主義の中心であると述べました。新しい技術が古いビジネスを破壊し、あらたな仕事が創出されます。自動車によって、23万8,000人の鍛冶屋が廃業しましたが、デトロイトで車を製造するもっと大勢の労働者を生み出しました」
「しかし、現代の先端技術は、非常に破壊的であり、新たな雇用の創出という点では、創造的ではありません」
あるハイテク企業の報告によると、今後10年以内に全ての職業の三分の一が自動化によって失われる。スマートフォンのアプリが業界を破壊している。「タクシー業界でUberが、ホテル業界でAirbnbが行っていることを考えてみてください。アルゴリズムは友人ではないのです」
"60Minutes"の記事の取材の中で、金融機関の創造的破壊は、バンキングアプリを開発しているが、それは米国の60万人の銀行の窓口担当者のポジションに取って代わるだろうことを彼女は発見した。「ファイナンシャルアドバイザーでさえもアルゴリズムに置き換えられるのです」
Stahlは、テクノロジーの負の側面はプライバシーの侵害、コンピュータによる戦い、ハッカー被害などを伴うと述べた。そして彼女は、多数の新車、冷蔵庫、その他の日用品がネットワークにつながっている「モノのインターネット(Internet of Things)」についても報告した。最終的には、職場や家庭にあるほとんどあらゆるモノがインターネットに接続され、不正実行者が個人識別情報をもっと容易に盗むことができるようになる。
「我々は平気でこれらの先端技術と共に過ごし、生活を明け渡そうとしています。我々は議論をすることもなく、ただそういうことが起きています」
先端技術はニュースの報道にも影響を与えていると彼女は語った。彼女がジャーナリズムの世界で働き始めた頃、大統領は国民に対して3大ネットワークを通して語りかけた。もちろんケーブルはなかった。「つまり全国民が大統領の話を聞いたのです。この国の誰もが決まった3人のニュースキャスターが伝える夕方のニュース番組を同じ時間に見ました。そのことで我々は1つの国としてまとまりました。とても結束力がありました。ニュースキャスターは皆、冷静で頼もしく、信頼できました」
今は、非常に多くのケーブルテレビやオンラインの放送局があり、それらは「コンテンツ」を提供するが、静かに提供されるものも信頼できるものもない。オンラインの情報は断片的で盛りだくさんで、少々感情的でもあり、「溶岩流」のようで我々が読んで真実だと思える確証はない。このすみ分けが、自分と好みを同じくする人の考えだけを強化することに関心を持つ人々の2極化の原因となります。「立ち止まって小休止する方法を見つけ、先端技術がしていることを再評価しなければなりません」
しかし、Stahlはこの世の終わりのような知らせだけを残して講演を終わらせることはなかった。彼女は、ミレニアル世代(1980年前後から2005年ごろにかけて生まれた世代)は娯楽や学習のためにオンラインの電子コンテンツを見るより、印刷物を読むのを好むことが最近の調査で判明したと述べた。「彼らは古風なスタイルで読書することを好みます。これは心強いことです」。そしてピュー・リサーチセンター(米国の世論調査機関)の調査で、これらの中で最も人数が多かったのは、18~29歳の年齢層であったことが判明した。「そして、彼らは今でも公立の図書館を利用しているのです!ですから全てが失われた訳ではありません」。このような揺り戻しが起きており、先端技術の最も望ましくない側面は弱まるだろう。
レスリー・ストール氏 基調講演の動画はこちらから:
https://www.fraudconferencenews.com/home/2015/6/16/lesley-stahl-keynote-speaker
ACFE JAPAN 理事長 濱田眞樹人