日時:2015年6月15日(月)~17日(水)
場所:メリーランド州ボルティモア
最終日6月17日の分科会の前半はH-11 Digital Forensics社のMichael Hansen(マイケル・ハンセン)による"Morality, Legality, and Reality of Digital Forensics in Investigations"です。デジタルフォレンジックは歴史が浅いので、その調査に関しても当然のように歴史の積み重ねが無いのです。彼の講演は調査において調査人が被疑者や被調査者をどの様に法的に、そして道徳的に適正に扱うか、そして、調査人が被疑者や被調査者のデバイスは信頼できる情報の源泉とすることができる技術の実際を紹介しました。この分科会に参加していたCFEのiPhone使用率が高かったですが、簡単にiPhoneから情報を引き出す方法があることや、電子証拠を分析するForensic Exploreというツールも素人の私には新鮮でした。
最終日の分科会の後半は、InfoZoom/SoftLake SolutionsのSteven Pesklo(スティーブン・ペスクロ)による"Using Data Visualization to Undercover Fraud"です。多くの調査人が使用するデータ・アナリティクスのソフトウェアが、不正調査データを画像・グラフ・図・表などへと可視化する事により従来見落とされていたパターンを見付けることができる新たなレベルにしたそうです。講演者の扱うInfoZoomというシステムによる可視化のデモンストレーションは「宣伝だよな」と感じつつも成る程と思わせるプレゼンテーションでした。
最後を締めくくるのは防衛産業のNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン社)におけるアメリカ空軍のステルス戦略爆撃機B-2を含む複数の防衛装備の米国政府への不正な過剰請求に関するWhistleblower(内部告発者)であるJames Holzrichter(ジェームス・ホリチャー)と保険会社INGで横領を行い有罪となったNathan Mueller(ネイサン・ミューラー)両名による基調講演です。
ACFEは2015年のCliff Robertson Sentinel Award (告発者賞)をホリチャー氏に授与しました。毎年この勇気ある受賞者に対してはカンファレンス参加者から熱烈な称賛の拍手が送られるのです。ノースロップ・グラマン社はFalse Claims Act (虚偽請求取締法:FCA)上の不正行為に対して1億3,400万ドルを米国政府に支払うことになりましたが、ホリチャー氏も仕事を失い再び就職できず、家族は家を失ったそうです。彼は、現在は経験を生かして告発者のメンターをしており、2007年にはWhistleblower Mentoring Initiative Projectを始めています。
ミューラー氏の横領はカード支払いの為にたったの1,000ドルから始まったのですが、徐々にギャンブル中毒となり、CPAである彼は手口を複雑化し横領のために会社まで設立して、横領額は4年で850万ドルへと膨らんだそうです。同僚の疑念により発覚し、97ヶ月の禁固刑で全てを失いましたが、2014年に出所したばかりです。刑期を終えた彼は家族との生活を取り戻せたそうです。
ACFEはカンファレンスで毎年有罪になった不正犯にから教訓を得るために講演をしてもらいますが、謝礼の支払いは行わないと公表しています。
プログラムディレクターの閉会宣言でカンファレンスは幕を閉じます。来年2016年の第27回のACFE年次カンファレンスは6月12日から17日までラスベガスで開催されます。日本からも多くの方が参加していただきたいと思います。
ACFE JAPAN 理事長 濱田眞樹人