日時:2014年6月16日(月)~18日(火)
場所:テキサス州サンアントニオ
ACFEカンファレンス初日のオープニングで、トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)の創設者であるピーター・アイゲン博士は次のように述べた。「世界の政府はガバナンスを怠っており、その結果、環境の悪化と10億人の人々が「貧困ラインを下回る生活する」貧困の原因となる腐敗をもたらしています。しかし、TIのように政府や民間企業と共に働く市民社会組織は不正との戦いで成果を上げています」。
彼は、国民国家はグローバルエコノミーを統治する能力を失っている。国家は自己の利益、国境や政策を越えて機能する能力の欠如、指導者の短い在任期間により制約を受けていると述べた。
さらに、多国籍企業は国境問題を回避する能力を持ち、世界規模のガバナンスを創り出しているが、その多くは他社との競争や他国の支配力により腐敗していると述べた。「誰がゼネラル・エレクトリック社やシーメンス社の役員室に、人類や地球の長期的な運命にとっての公共財を処理する権限を与えたのでしょうか?」
「大企業は、グローバル化した経済の下では、社会的な責任を持った行いをするために適切な統治が必要です。何故ならばもし彼らが、自分たちと同じ基準の責任を果たさない競争相手に直面したならば、短期的には競争上の不利益を被るのはもっともなことだからです。したがって、民間部門による良い行いを可能にする環境はどこか他の場所に創られるのです。ここで問題があります。『だれがその領域に足を踏み入れることができるのでしょうか?』」
アイゲンは、市民社会組織はそれが可能であり、他の2つのタイプのガバナンス、すなわち国民国家および企業のガバナンスの重要なパートナーとなっていると述べた。アイゲンは市民社会組織であるTIを通してこのことが実現されるのを見てきた。アイゲン博士は世界銀行 東アフリカのナイロビ・オフィスの局長であった1988年(偶然にもジョセフ・T・ウェルズ博士 CFE, CPAがACFEを創設したのと同じ年である)、組織的な腐敗が自分たちのなし得ようとしてたこと台無しにしていることを目の当たりにした。彼はこのような犯罪に取り組む活動を開始したが、世界銀行の反対にあった。
「我々が贈賄に反対する国の人々を保護するための体系的な取り組みを開発したように他の国々からの何人もの代表と共に活動するシステムを作りました」と彼は述べた。 しかし彼は、世界銀行の法務部から、彼のしていることを容認することはできない。その国の政治的、経済的、社会的な問題に干渉することになるので、彼は腐敗に反対することは許されないと告げるメモを受け取った。
そこで彼は腐敗防止の活動を、勤務時間後の夜に行った。しかし今度は世界銀行の総裁から、アイゲンは組織の恥であるといったメモを受け取った。
アイゲンは、ついに世界銀行を退職し、1993年に志を同じくする活動家と小規模なグループを結成し、TIを創始した。欧州の政府は、贈賄と腐敗で自らの身を守っていたので彼に非常な敵意を見せたと彼は述べた。「もちろん米国は、1977年に海外不正行為防止法を制定していたので、その体制に自分たちの競争相手を従わせることに関心を持っていました。しかし私の母国であるドイツ政府は、私の活動に反対していました」。
1990年代の初めには、ドイツの企業は、政府が容認し、所得控除も可能だったため贈賄を日常的に行っていたと彼は述べた。
しかし、TIは徐々に、腐敗のない市場でグローバルに競争することが産業界や政府の利益にかなっていることを彼らに納得させていったと彼は述べた。
それ以来、100か国以上にチャプターをもち、グローバルで超党派のNPOであるTIは、腐敗のもたらす被害との闘いにおいて、政府、企業、市民社会および個人を支援している。
TIは、腐敗認識指数(CPI=Corruption Perceptions Index)、各国の公共部門の腐敗に関するスコアカードよって最もよく知られている。さらに、TIは、リーダーや市民と協力しながら、国際的な反腐敗条約を策定し、出版物を普及させ、腐敗したリーダーを訴追するなどの活動もしている。また、腐敗防止に取り組むために国民総選挙を支援し、企業を責任のある組織として維持するための取り組みもしている。
アイゲンは、1つのビジョンを掲げてグローバルな活動を始めた。
そのビジョンとは、「政府、企業、市民社会および人々の毎日の生活が腐敗から解き放たれた世界を作ること」であった。
2005年に彼はTIの代表から退き、現在は組織の諮問委員会の委員長職についている。
ピーター・アイゲン氏 基調講演の動画はこちらから:
https://www.fraudconferencenews.com/home/2014/6/16/video-keynote-speaker-prof-dr-peter-eigen
FRAUD MAGAZINE 編集長 Dick Carozza