日時:2013年6月23日(日)~28日(金)
場所:ネバダ州ラスベガス
2日目の朝の基調講演は、リスクコンサルティング会社Chrismathers Inc.のChris Mathersです。彼はマネーロンダリング、テロ、組織犯罪対策の専門家です。2004年の会社設立前はRoyal Canadian Mounted Police (RCMP)、US Drug Enforcement Administration (DEA)、U.S. Custom Servicesを経てKPMGのForensic Divisionに加わり、KPMG Corporate Intelligenceの社長を務めていました。ユーモア溢れる語り口で、彼の近著『CRIME SCHOOL: Money Laundering(犯罪学校:マネーロンダリング)』の捜査経験について話しを披露してくれました。犯罪者特有の行動については後になればそうだったと気付くものですが、採用の際に気付くのは困難ではないとバックグラウンドや生活態度に関する調査の重要性を強調していました。(写真1.)
昼食時にはStacy Keachによる基調講演です。TVドラマシリーズDetective Mike Hammer(探偵マイク・ハマー)役で有名で、Ernest Hemmingway役でゴールデングローブ賞を取っている俳優で、最近では、ホワイトカラー犯罪を扱ったドキュメンタリー番組American Greed(アメリカングリード)のナレーターとして活躍しています。多くの参加者が楽しみにしていたようです。American GreedのTyco InternationalのDennis Kozlowski元CEOのフィルムなどを交えてのスピーチは流石俳優でした。
Stacy Keach氏が歌う”American Greed: Anything For Money”をYou Tubeでご覧下さい。
2日目午前中の分科会はZack PCのPresidentであるGerry ZackによるRecent Case Studies in Financial Statement Fraud(最近の財務諸表不正のケーススタディ)に参加しました。財務諸表不正の手口のベスト3はImproper Revenue Recognition(不適切な収益認識)、Overstatement of Assets(資産の過大計上)、そして、Understatement of Liabilities / Expenses(負債や経費の過少計上)です。直近の12か月で5件のケースを取り上げての解説でした。 Fictitious Revenue(架空売上)とTiming Difference(収益計上時期の差異)、Off Balance sheet Cash Account(帳簿外勘定)、Fraud in Business Combinations(企業買収価格に関する不正)などを取り上げられました。架空循環取引を”Round-tripping”とは言い得て妙です。
午後の分科会の前半はCity of Kansas CityのInternal AuditorであるRoy GreenwayによるNuts and Bolts of Vender Auditsからです。ナットとボルトですから、仕入先監査の基礎と訳しましょうか。長期にわたるカンザスシティでの調達、購入、事前調査、契約などに関する監査経験を基に、仕入先との関係を監査することにより、賄賂、キックバック、架空取引、架空請求、粗悪材料使用などを発見できることについて話をしました。まずは仕入先を実際に訪問することが基礎であることを強調しながら、ケースも交え、実に詳細なプレゼンテーションでした。
分科会の後半は、MGM Resorts Internationalで世界中のInternal Auditの責任者であるBob Rudloff SVPによる14 tips - Implementing an FCPA Compliance Program(贈賄防止法遵守プログラム14の要素)です。米国の連邦法であるThe Foreign Corrupt Practices Act (贈賄防止法:FCPA)の司法省とSECによる執行 が米国以外の企業にも大きく影響を与えている今、大事なトピックです。誰にも関係しているという意識、専門家の補助が必要であること、トップのコミットメント、贈賄リスク評価、適正な内部監査の関与なしにFCPAリスクは管理できないこと、各自の役割と責任を明確にしておくこと、第三者(取引先)からのFCPAリスクを評価すること、現在の規則にFCPAに関する説明責任と責任を付け加えること、トレーニングとモニタリングを含むコンプライアンス・プログラムを文書化すること、Disciplinary procedures(罰則)を定めて周知すること、訓練と再訓練、モニタリングとレビュー、秘守報告手続、プログラムのテストと14の要素についての説明がなされました。最後にReport, Report, Reportと強調して終わりました。
別室での民間企業、政府機関、大学等のブースの出展も過去最高の数を更新しています。過去の不正に関する歴史的展示物「不正博物館(Fraud Museum)」も見ものでした。ACFE Global Fraud Conferenceは次の会社をはじめとする多くのスポンサーに支えられています。
本日は19時からプールサイドでNetwork Receptionがあります。外は20時位まで明るいですから、飲み会という雰囲気ではありませんが、多くの他国の会員と知り合える良い機会です。朝御飯から夕方まで長い一日会議場の建物から一歩も出ていませんから、時差ボケもあり、夕方の日の光が眩しいです。
報告者 ACFE Japan 理事長 濱田 眞樹人