ACFE の活動のひとつに、大学の学部や経営大学院などの高等教育において不正防止に関する教育を提供する The ACFE Anti-Fraud Education Partnership(ACFE 不正防止教育パートナーシップ)があります。
企業不正を防止するためには、不正に対する正しい「経営者の意向や姿勢(Tone at the Top )」を組織に浸透させるとともに、不正を防止し発見する仕組みを導入しなければならなりません。企業は、自社の不正リスクを分析し、どのような場合に人が不正を犯すのかに関する知見に基づいた不正の防止と発見の仕組みを構築する必要があります。そのためには、将来の企業経営者、管理職、監査人、証券市場の関係者となる人材に対する高等教育における不正の防止と発見に関する教育が重要なのです。米国においては ACFE がヴィデオ教材を提供することによって 430 校の大学や大学院の教員と協力して不正防止に関する教育への協力を展開しています。
ACFE JAPAN においてもこの不正防止教育パートナーシップを 2010 年から開始しました。2014 年は青山学院大学の会計プロフェッション研究科と東北大学の会計大学院で企業不正の防止と発見に関する寄附講座を行います。15 回の授業において資産横領や財務諸表不正などをもたらす不正リスク要因および不正の具体的な手口(不正スキーム)に対する理解の向上を通じて、監査人や経営管理者に求められる企業不正リスク評価や対応力の基盤となる知識の習得を目的としています。また、ACFE による企業不正の防止と発見に関する知見に基づいて、最近の日本企業における不正事例の考察を織り交ぜながら、受講者の企業不正の防止と発見に関する理解促進に資することを意図しています。
さらに、2008 年 7 月に米国公認会計士協会(AICPA)、内部監査人協会(IIA)、ACFE が支持団体となって公表された” Managing the Business Risk of Fraud : A Practical Guide(企業不正リスク管理のための実務ガイド)” に示されたフレームワークをもとに、企業における不正リスク管理の要点を概観します。
事業のグローバル化、事業ポートフォリオの多様化、雇用の流動化、金融取引の複雑化等によって、現代の資本主義経済の基盤である上場企業をめぐる不正リスクは多様化して複雑化しています。経営者が自らの責任において、企業不正リスク管理方針を明確化し、不正リスクを評価し、防止、発見、対処する体制を整えているかを、資本市場のガバナンスを構成する監査人、監査役、取締役、そして株主自身も継続的に監視していくことが必要です。会計は企業の活動を支える基礎であり、ひいては資本主義経済の基礎ですから、将来の公認会計士や税理士、国税の専門官、企業や官庁の管理者、そして教員などの人材を生み出す会計大学院において彼らに建設的な影響を与えることが重要です。日本では、まだ小さな試みですが、継続していきたいと考えています。
立教大学 大学院 ビジネスデザイン研究科 特任教授
The Japan Society of USCPAs(日本における米国行員会計士団体:JUSCPA)副幹事長
博士(経営管理学)立教大学、USCPA(イリノイ州)、公認不正検査士、公認内部監査人、米国公認管理会計士、米国公認財務管理し、サーティファイドフィナンシャルプランナー®
ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン副社長、ハリー・ウィンストン・ジャパン社長など外資系企業のマネジメントを歴任。