(日本公認不正検査士協会の評議員の八田進二 青山学院大学大学院教授が臨時委員として参加されておられる)企業会計審議会は、平成25年3月2 6日、「監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書」を公表した。
この意見書は、「国際的な議論の動向等も踏まえつつ、我が国の公認会計士監査をより実効性のあるものにするとの観点から、不正に対応した監査手
続の検討を行い、監査基準等の所要の見直しを行うこととした」ものであると説明されている。一見すると、これは「公認会計士監査のための基準」
の公表であり、我々公認不正検査士には関係がなさそうにも見える。しかし、具体的内容をみると、不正リスク対応基準の「第二 不正リスクに対応し
た監査の実施」「14 専門家の業務の利用」において、「監査人は、不正リスクの評価、監査手続の実施、監査証拠の評価及びその他の監査実施の過程において、不正リスクの内容や程度に応じて専門家の技能又は知識を利用する必要があるかどうかを判断しなければならない。」と規定されている。ここでいう、「専門家」とは、誰を指すのであろうか。これは、「公認不正検査士」を意識した規定なのである。なぜならば、公認不正検査士こそが、「不正に関する教育・訓練を受け、知識と経験を有する専門家」なのだから。つまり、我々公認不正検査士にとって、その存在を世間にアピールし、社会に貢献する、大きなチャンスが到来したのである。
また、この基準では、監査人に不正リスクに対応した監査を実施することを求める一方で、財務諸表の作成責任は経営にあるという、二重責任の原則が強調されている。不正を抑止し、早期発見して、財務諸表から不正の影響を排除すべき責任は、本来、経営者にあるのだ。では誰にその経営者の責任遂行を支援できるのか?二重責任の原則の下、それが監査人の役割でないことは明らかである。ここにも、我々公認不正検査士の活躍のチャンスは埋もれているのである。
しかし、だからと言って、世間の誰かが、親切にも、公認不正検査士に新たな使命を用意し、活躍の機会を与えてくれるはずもない。公認不正検査士自身が、まさに、「不正対応の専門家」であることを、その実績を積み上げて自ら立証していくことが求められている。チャンスはそこにある。 それを活かすのも、無駄にするのも、我々次第である。
ACFE JAPAN 理事
ACE コンサルティング株式会
社代表取締役 公認会計士、
公認不正検査士