現在,企業不祥事等が発覚した場合に企業とは独立の第三者的な立場から調査を行うことを目的とした「第三者委員会」が設置される事例が多く なった。第三者委員会に関しては,かつては,第三者性に疑義のある第三者委員会も多く見受けられていたところ,日本弁護士連合会が,平成22 年7月15日付で「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(平成22年12月17日改訂)(以下,「第三者委員会ガイドライン」という。)を公表し,第三者委員会に係る一定水準の品質確保に資するものとなっている。この第三者委員会ガイドラインは強制力のあるものではないが,東 京証券取引所の「上場管理業務について-虚偽記載審査の解説-」においても,第三者委員会の設置に関しては,第三者ガイドラインを参照する旨 の記載もあり,現在,第三者委員会実務における主要な指針となっている。
もちろん,第三者委員会ガイドラインは,企業等不祥事が生じた際のベストプラクティスとの位置付けであり,どのような場合であってもこの第三者委員会ガイドラインに準拠しなければならないものではないと考えられるところである。例えば,自社の内部統制の運用の過程において不祥事等を発見した場合には,当該会社の自浄作用が働いているものと考えられることから,このような場合までも第三者委員会ガイドラインに準拠した第三者委員会を設置する必要性は乏しく,社内調査委員会等による対応であっても十分に当該不祥事に係る原因究明及び再発防止策の策定は可能であろう。一方,経営者による不正が行われた場合には,当然のことながら,第三者委員会ガイドラインに準拠した第三者委員会の設置が求められることは言うまでもない。
このように,第三者委員会ガイドラインは,実務に定着をしており,当初の目的を果たしたかのように見受けられる。しかし,現在においても第三者委員会ガイドラインに準拠した旨の記載はあるものの第三者委員会による調査の品質に疑義を抱かざるを得ないものがあるのもまた事実である。市場規律の強化に係る第三者委員会の役割は重要である。今後,さらに充実した第三者委員会の運営に資するためにも,我々,公認不正検査士が関与する余地は十分にあると考える。公認不正検査士の活躍する場は,企業内外を問わず幅広いが,今後,この第三者委員会の委員,あるいは調査補助者として,公認不正検査士の知見を役立てる場がさらに増えることになると考えている。
ACFE JAPAN 理事
公認会計士 宇澤事務所代表
公認会計士、公認不正検査士