文書は、他者とのコミュニケーション (意思伝達) を確実にするために使用される。しかしその文書も、偽造などの形で"犯罪"に使用される場合がある。その対象は、お札、切手、商品券、コンサート チケットなどの金券・有価証券に限らず、契約書、領収書、受取証など様々なものが含まれる。
筆跡とは何だろうか? 皆様も自分が書いた文字を観察してみてほしい。色々な方の文字を眺めていると実に様々なものが見えてくる。個人の癖というものが文字に表れているはずである。これこそ"筆跡"である。つまり個人の文字の書き方には"習性"があり、それを専門家達は見抜くのだ。
下の図は、裁判で使用された、本人のサインと不正犯 (詐欺犯) が書いたサインの比較図である。
筆跡鑑定で注目するのは"筆圧"である。特に英語のサインの場合は、筆記体の英語が繋がっている部分 (connecting strokes)、サイン欄に対してどの位置に書くか (枠線からの浮かせ具合など)(line quality)、文字の繋ぎ合わせの部分 (patching)、二度書き (retouching)、最初の文字の書き出し方 (blunt starts)、ペンの持ち上げ方 (pen lifts) など、これらの筆圧の違いを確認するのである。
次の図を見てほしい。
図 2 の、一つ目 (上) は本人の手書きのサイン、二つ目 (下) はそれを他人が真似たものである。違いが分かるだろうか?
外見上は、Joe の oe の部分と、Bloogs の oog の部分に違いを見出だせる。さらに筆圧にも注目すると、J の横棒や、B の縦棒、s のはらい (最後) の部分で、線の長さや色の濃さなど、力の入れ具合の違いを見出だせる。似せて書こうとすると、不自然に力が加わり、このような差として表れてくる。
次の図を見て欲しい。これらのサインが何人で書かれたかお分かりだろうか?
次回は、映画「マネーゲーム 株価大暴落」(原題"Boiler room") を通じて、被害者学 (Victimology) についてお話する所存です。
株式会社ディー・クエスト 公認不正検査士 山本 真智子