犯罪学コラム #17 あなたも立派なプロファイラー!
2017年8月30日犯罪学コラム #19 「不正のトライアングル」構成要素のひとつ「動機」について
2017年11月29日
Look at yourself! What is your personality?
事件を報道するワイドショーなどで、犯人あるいは容疑者について、知人や隣人が「そんな事件を起こすような人には見えなかった」などと回答しているのを見聞きしたことはないだろうか?
ACFE が提供する「Inside the Fraudsters Mind 不正実行者の内面」(リンク先は ACFE JAPAN Web ラーニングのコース) に登場する不正実行者たちも、一見するといわゆる普通の人でしかない。
普通の人である彼らが不正に手を染めるまでには、彼ら自身を取り巻く状況 (環境・境遇) の認識、心理状態の変化、自己の正当化という過程があり、それは不正のトライアングルとして知られている。
そして、不正・犯罪を研究する上で大切なことは、それらを行うのが「人間 (human being)」であるということである。人間のより深い理解が、不正や犯罪の理解を促す。
今回のコラムでは、前回のプロファイリング (人物像推定) の延長として「人格 (Personality)」を解説する。
あわせて、ご自身のパーソナリティについてもより理解を深めていただきたい。
辞書や辞典を紐解くと、パーソナリティ (Personality) について、人格、個性、性格など、様々な定義があるが、Otto F. Kernberg [※1] は次のように定義している。
人の主観的経験および行動パターンによる全体の動的統合。
具体的かつ習慣的な行動、自己経験、環境から受ける経験など顕在意識的なもの。
また、習慣的な欲求、恐れ、無意識による行動パターン、経験と見解など無意識的なものも含む。[※1]
つまり、誰一人として同じ人格はいない。まったく同じ場面でも、人が違えば行動も異なるように、人格には少なからず個人差がある。
性格検査による人格分類
人格の分類や測定には、様々な方法が試みられている。その多くは、人格のタイプを設定し、個人がどのタイプに該当するのかを判定する方法による。
個人の分類として「外向的 (Extrovert)」「内向的 (Introvert)」を定め、いずれかに当てはめるという考察方法を用いた心理学者ユング (Carl Gustav Jung, 1875-1961) を始め、現在までには数多くの心理学者が様々な考察方法を考え出しているが、ここでは YG 性格検査 (矢田部ギルフォード性格検査)® を紹介したい。
この YG 性格検査は、企業の採用時試験など広く用いられている質問紙性格検査である。被検者には質問ごとに「はい」「いいえ」「どちらでもない」のいずれかを回答してもらい、その回答を集計して 12 の性格特性の尺度を算出し、そこから性格の特徴を分類する。(詳細は、日本心理テスト研究所の説明 ( https://sinri.co.jp/yg/ ) をご覧いただきたい。)
次のサイトで、この YG 性格検査を試すことができる。興味をお持ちの方は、ぜひ自己分析してみてほしい。
ホワイトカラー犯罪者 (white-collar criminal) に見られがちなパーソナリティ
ホワイトカラー犯罪者の人格特性についての研究がある。Tage Alalehto によると、ホワイトカラー犯罪者には、外向的で、うぬぼれ (思い上がり) の強い人物が多いとされる。
ほとんどのホワイトカラー犯罪者は、外向的 (社交的、自制的、緻密) であり、うぬぼれであり、愛想がよいが、不安症であり、神経質である。[※2]
ただ、これらの性質を持っているからと言って、ホワイトカラー犯罪者になるというわけではないということも付け加えておきたい。
株式会社ディー・クエスト 公認不正検査士 山本 真智子
備考
- 「YG 性格検査 (矢田部ギルフォード性格検査)」および「YGPI」は、日本心理テスト研究所が権利を有する登録商標です。
文中注釈について
- [※1]:参考文献 1. を翻訳
- [※2]:参考文献 5 を翻訳
- Otto F. Kernberg (2016).
"What Is Personality?"
Journal of Personality Disorders: Vol.30, No.2, 2016
New York, NY: Guilford Press, pp.145-156.
- 梅本 堯夫, 大山 正, 岡本 浩一, 高橋 雅延 (1999).
「コンパクト新心理学ライブラリ 1 心理学」
株式会社サイエンス社
- Judith M. Collins, Frank L. Schmidt (1993).
"Personality, Integrity, and White Collar Crime: A Construct Validity Study"
Personnel Psychology: Vol.46, Issue 2, June 1993
Hoboken, NY: Wiley Periodicals, Inc., pp.295-311
- Laurie L. Ragatz, William Fremouw, Edward Baker (2012).
"The Psychological Profile of White-collar Offenders: Demographics, Criminal Thinking, Psychopathic Traits, and Psychopathology"
Criminal Justice and Behavior: Vol.39, Issue 7, July 2012
Thousand Oaks, CA: SAGE Publications, pp.978-997
- Tage Alalehto (2003).
"Economic Crime: Does Personality Matter?"
International Journal of Offender Therapy and Comparative Criminology: Vol.47, Issue 3, 2003
Thousand Oaks, CA: SAGE Publications, pp.335-355