「羊たちの沈黙」(原著:"The Silence of the Lambs") や「ハンニバル」(同"Hannibal") をはじめとした、多くの映画・ドラマ・小説で、犯罪者のプロファイリングを行う場面が現れる。専門の知識・技法を駆使して犯人像を構築する描写には、観客・読者の多くが感嘆し、憧れを抱くことだろう。
そこで行われるプロファイリングは、あくまで捜査の効率化や犯人の逮捕を目的としており、姿の見えない容疑者へと迫るために、その行動や特性を推測する。ここでは詳細については触れないが、プロファイリングとは、イメージで言うと膨大な情報を組み合わせて一枚の絵へと仕上げていくジグソー パズルのような作業である。
ところで、実は我々も日常的にプロファイリングを行っている。たとえば、対面して会話する場面を想像してほしい。相手がにこやかな表情の場合と眉間にしわを寄せている場合とでまったく同じだと考えるだろうか?
そう、あなたは意識せずとも、相手の考えや心情を、言葉の調子や、表情、身振り手振り、姿勢などから読み取っているのである。感覚 (主に視覚や聴覚) を通じて得られる莫大な情報を、脳がミリ秒の単位でひとつの推測へとまとめ上げているのだ。
次の絵をご覧いただきたい。それぞれの人物は、どのような場面にいて、どのような心情なのか、想像できるだろうか?
あなたはどこに注目し、どのように想像しただろうか? 自分はこのように考えてこのように想像した、と説明できた人は、すでにプロファイラーである。
すでに説明したように、プロファイリングとは、情報の組み合わせによる全体像の構築である。写真から情報を抜き出し、考察し、理論的な推測を導き出す、という過程すべてを指す。
プロファイリングは推理という面が強調されがちであるが、そこで必要となる能力は、不正検査でも必要となる注意力と洞察力であり、また、第 15 回「感覚と知覚」でも触れたように、決して先入観を持たないことが重要である。
では、クイズを通じてこれらの能力を確認してみよう。次の問題を解いてみてほしい。(正解は文章の最後に記載している。)
推理・考察を行う際は、いかに先入観を排除するか、また、判断に不要な情報をいかに排除するかが重要である。つまり、客観的な視点で、事実だけを見詰め続けることが大切なのである。
株式会社ディー・クエスト 公認不正検査士 山本 真智子