「犯罪学」と聞くと、皆さんはどのような学問を考えるでしょうか?
犯罪に関する学問であり、教育機関で専攻しない限り、あまりなじみがないと思われるのではないでしょうか。または、単に犯罪について学ぶ学問であるとも思われるかもしれません。しかし、実は、「犯罪学」は私達にとって、とても身近な学問であると言えます。
「犯罪学(Criminology)」とは、犯罪の原因やその遂行過程についての法則性の発見。犯罪抑止についての施策を対象とする学問。精神医学、犯罪心理学、犯罪社会学、刑罰学などから成る[※1]と広辞苑にあります。つまり、犯罪の原因や法則性を理解し、「犯罪」(罪を犯す事。[法]刑罪を定めた諸規定の犯罪構成に該当する、違法、有害な行為、法益侵害行為)[※1]という社会のルール(規範)と人との関係を説明するにあたり、科学的に実証できる様、発展した学問です。そして、これは社会、地域、環境、個人、他者との関わりがベースにあり、私達が生きている限り、関わっていかなければならないものばかりです。
特に、欧米諸国においては、多種多民族国家であるからこそ、宗教、肌の色の違いからくる差別や思考、育った環境等の相違が生じます。当然、衝突が起こり、時には人に危害を加え、意見の不一致により、人種偏見等の社会現象を人々がコミュニティとして作り始めます。こうした現象を土地の広さや社会において原因を探る為には、法律という社会規範の他に、学問として考えざるを得なかったのかもしれません。
そして今日、「犯罪学」は、人の考えや行動について、個人レベルから社会レベルまでを対象に学び、犯罪が起こる社会的背景や犯罪者の心理状態などを研究し、犯罪の原因や犯罪捜査の支援、犯罪者の更生や被害者の支援など幅広い分野を扱う学問となっています。
犯罪学の起源は、古代ローマまでさかのぼります。
もともと刑法思想から実証し始めたこの学問は、ハンムラビ法典において"目には目を歯には歯を"="やられたらやり返す"という同害報復の観念で公刑罰を規定していました。しかし、1764年、チェザーレ・ベッカリーア(Cesare Beccaria 1738-1794) イタリアの法学者,哲学者,経済学者が "犯罪と刑罰"という書物において、刑罰と死刑廃止を提唱し、刑罰の残酷さを訴えるとともに、「刑罰は社会にとって最小限に留めるべきであり、教育によって犯罪を防止するべきである」という刑法思想、また「人々は、利己主義により効果的な処罰方法がないと判断した時、自己の自由意志選択により、犯罪は引き起こされる」という古典理論を提唱しました。
ベッカリーアの思想、理論を筆頭に、その後、ロンブローソ(イタリア学派 精神科医、生物学的理論を提唱した人物)、サザランドやクレッシー(アメリカ 社会学者、分化的接触理論を提唱した人物)と共に社会学、生物学、心理学という分野が「犯罪学」という学問への融合を目指しました。そして「犯罪学」という名称自体は、ロンブローソと同派のラファエレ・ガロファ(Raffaele Garofalo 1852-1934、刑法学者、裁判官、犯罪学者)が初めて使用したといわれています。
次回は、ロンブローソ、犯罪者と体格(骨相学)についてお話する所存です。
株式会社ディー・クエスト 公認不正検査士 山本 真智子
The History of Criminology, Part 2
https://www.thoughtco.com/the-history-of-criminology-part-1-974579