執筆者:Mason Wilder, CFE, Senior Research Specialist
面接による調査は不正調査において必要不可欠なパートであり、面接を適切に遂行することは調査成功の可否に大きく貢献する。残念ながら、どんな組織におけるどの面接調査でも適用できる最適なテンプレートというものは存在しない。
不正検査士にとって、面接調査の場面でかじ取りが難しい事柄は、面接調査に何人が参加するべきか、どの担当者に同席させるか、あるいは同席させないかを決めることだ。どうするべきか決めるには、下記に示すような事柄を十分検討し議論することが重要だ。
通常、面接官は面接調査の成功確率を上げるために、面接対象者の気が散るようなものを排除する努力をするべきだ。面接室に他人がいると、対象者の気が散ってしまうことはしばしばある。しかし、第三者の立ち合いが必須だったり、面接プロセスをサポートするのに必要だったりする場合もある。
面接調査の計画と対象者について計画を立てる前に、一般的な不正に対する方針、インシデント対応方針、調査方針、一般的な雇用契約など関連する方針を確認する必要がある。組織や業界によって、運用している方針は異なっている。
例えば、従業員が不正行為や詐欺の申し立てにより面接調査を受ける時には、必ず人事部門か法務部門の担当者の参加を求めている組織がある。このような状況では、人事部門や法務部門の担当者は、対象者に質問をするなどして面接調査の参加者になることを控えるべきだが、対象者の状況によっては介入が必要になる場合もある。大半のケースでは、人事部門や法務部門の担当者は、面接調査の証人あるいはオブザーバーとして、調査が組織の方針や法と合致していることを保証するために参加する。
法律が容認していれば、調査は組織が行うことを規定している組織もあるだろう。組織方針の中で、面接対象者の法定代理人の出席が可能か、あるいは出席を求めているかを詳しく規定している場合がある。面接対象者が法定代理人の出席を求めているのにそれを拒否した場合、協力的に進んで情報を提供してくれる可能性は極めて低くなるだろう。
アメリカなど一部の国の法律では、従業員が労働組合やそれに類する組織(イギリスの労使協議会のような組織)のメンバーの場合は、不正行為の調査のために行われる面接調査に、組合の代表者の同席を規定している場合がある。こうした事柄は組織の方針で対処するべきだが、面接官に係る正式な方針がない場合は、面接調査をしようとしている従業員が組合員か否か、あるいはそれにより面接調査に影響があるかどうかをよく検討しなければならない。
面接調査が政府の職員や公務員によって行われるなら、対象者の弁護団の同席が許可されなければならないだろう。例えばアメリカでは、公務員の調査官は、政府や政府職員が従業員を拘束したり何らかの方法で行動の自由を奪うのなら、面接対象の従業員にミランダ警告(質問に答えない権利や取り調べ中に弁護団をつける権利などを通告すること)をしなければならない。民間の調査官がミランダ警告を行わないことはまれだが、ないわけではない。
対象者が面接官と同じ言語を流ちょうに話せない場合は、質疑応答を正確かつ効果的に進めるために通訳を入れるべきである。このような場合、対象者には、通訳は組織を代表する立場になく、コミュニケーションを円滑にするためにいることをはっきりと説明しなければならない。さらに、可能な限り通訳者や翻訳者は外部の組織から採用する。対象者の同僚が通訳を務める場合、人間関係があることによる利益相反の恐れがあり、対象者の供述にポジティブあるいはネガティブな影響が及ぶ恐れがあるためである。
面接調査が終了して対象者が部屋を出た後で、面接官と通訳者または翻訳者は対象者の回答、態度、ボディランゲージなどについて文化的な背景も考慮に入れて検討する。他国出身の者への面接調査は文化的な事情を考慮して行われるが、通訳者や翻訳者からのフィードバックが洞察を深めてくれる場合がある。
面接官を複数にするべきかどうかについて確固たるルールはない。したがって面接官や不正調査をリードする担当者がやりやすいようにできる。面接官が質問をしている間、対象者に証拠を提示したり、観察してメモをとるなどのために、もう一人面接官がいた方がいいという不正検査士もいる。2人の面接官で面接調査を行う場合、事前に役割分担を決めて臨むべきだろう。
繰り返しになるが、全ての面接調査が成功するような方式はない。しかし面接調査に誰が同席するべきか検討することは、どのように進めれば良い結果が得られるか決定するのに役立つだろう。
英文タイトル :Who Should Be in the Interview Room?
英文記事リンク:https://acfeinsights.squarespace.com/acfe-insights/who-should-be-interview-room
原文掲載日:2021年2月12日
翻訳:ACFE JAPAN事務局
※わかりやすさを優先させるため、意訳を行っています。ACFE JAPAN (一般社団法人 日本公認不正検査士協会) 公式の邦訳とは異なる表現を使用している場合があります。