今回はややアカデミックな内容を取り上げよう。テーマは「犯罪行為と逸脱行為」である。
この違いについて、正しく説明できるだろうか? このテーマは、犯罪学という学問の理解に非常に重要である。
私たちの社会では、各種の"紛争"が発生する。その原因のひとつに、おおよそ他人が取り得ない行為がある。人々が属する集合 (グループ) や社会の規範から外れた行為により紛争が発生する、というものだ。
この行為を「逸脱行為」と言う。
「逸脱行為」の一部は「犯罪」とされる。
「犯罪」と判断されるまでには、いくつかの正当なプロセスがあるが、そこではどのような基準により「犯罪」とするものとしないものとに分けているのだろうか。
まずはケースから考えてみて欲しい。これらのケースには、犯罪行為とされるものもあれば逸脱行為とされるものもある。その判断根拠は何だろうか?
ここに挙げたケースは、善良な一般人であればおおよそ取り得ない行動ばかりだが、犯罪行為とされるものもあれば逸脱行為にすぎないものもある。
「逸脱行為」を「犯罪行為」と判断するポイントのひとつに"深刻性"が挙げられる。犯罪学者達は、この深刻性を「犯罪の社会的構築」と呼んでいる。
改めて「逸脱行為」と「犯罪行為」の定義を見てみよう。
「逸脱行為」とは、人々が属する集合 (グループ) や社会の規範から外れた行為を指す。社会規範と照らし合わせ、好ましくない行為が該当する。
「犯罪行為」とは、法律という大きな規範に違反している行為を指す。法律により裁かれる (法令) 違反行為が該当する。
次の図は、その集合の概念図である。
不正検査士として意識しなくてはならないのは、「犯罪行為」≠「逸脱行為」であるという点だ。善良な一般人なら行わない、または、自分が好ましくないと思うからと言って、必ずしも犯罪行為であるとは限らない。
しかしながら、(法律違反行為・違法行為などの) 犯罪行為ではないならすべてが許される、という訳でもない。所属する集団にそれを罰する規則がある場合がある。たとえば就業規則に違反しているなら処分される。
不正の防止と抑止という観点では、組織にとって好ましくない行為については処分できる状況を用意しなくてはならない。また、実際にそのような行為を行った者に対して、組織の姿勢を示すために、他の者にもわかるように処分を行う場合もある。
不正検査士としては、何が犯罪行為で何が逸脱行為なのかを正しく理解し、組織にとって好ましくない行為をきちんと処分できる状況を作り上げる必要がある。
犯罪行為・逸脱行為に該当しているのかどうかの判断に悩む場合は、次のような質問を自らに問い掛けてみてほしい。
株式会社ディー・クエスト 公認不正検査士 山本 真智子