日時:2013年6月23日(日)~28日(金)
場所:ネバダ州ラスベガス
今年で25周年を迎えるACFEの第24回ACFEカンファレンスが開幕し、2,600名のACFE会員が世界各国から参加しました。(写真1.)
巨大な会議場にバグパイプの演奏者の先導で参加者60か国の国旗の入場行進が行われカンファレンスが始まります。日本を代表して日章旗を携えて入場行進するのは塩尻明夫先生です。(写真2.)
今年から会議の名称にGlobalが付き、今や米国外のメンバーが30%に達したそうです。
ACFEのPresident & CEOであるJames Ratleyに続いて、ACFE創始者であるJoseph Wellsの挨拶です。(写真3.)
高齢にもかかわらずいつもながらスピーチ巧者であることに驚かされます。 普段は何時もアロハシャツを着ているWells博士です。(写真4.)
そして、最初のGeneral Session(全員が参加する基調講演)はジャーナリストのAllan Dodds Frankです。彼はFortune誌やNewsweek誌の調査報道記者です。Investigative Correspondentsという言葉を初めて知りましたが、彼は複雑な金融事件に関して自ら調査をして報道します。Bernard MadoffやMartha Stewartのホワイトカラー犯罪、AIGの崩壊に関する金融事件の取材報道で有名です。マドフのビデオを交えたプレゼンテーションは流石に報道のプロであることを感じさせました。
(写真5.はACFEのBruce Dorris VPから2013 Guardian Award(守護者賞)を受け取るAllan Dodds Frankです。)
Working Lunch(昼食をとりながらの講演)にはU.S. Attorney Southern District of New York であるPreet BhararaへのCressey Award(生涯をかけて不正と闘った者に与えられるクレッシー賞)が授与されました。ニューヨーク南地区の連邦検事といえばRudolph Giuliani元ニューヨーク市長が有名ですが、現SEC長官Mary Jo Whiteも女性ながら同連邦検事を務めクレッシー賞を受賞しています。受賞スピーチにおいてBharara氏は不正の防止にいかに企業文化の醸成が重要であるかを強調しました。スピーチ中に5月にニューヨークの連邦地裁の陪審で有罪となった米ヘッジファンド大手ガリオン・グループの創設者Raj Rajaratnam被告の控訴が棄却されたというホットニュースを伝えると会場内はスタンディング・オベーションで満たされました。
ACFEカンファレンスの特徴は朝と昼に行われる有名な講演者による基調講演だけではなく、公募の会員によって行われる70種類のBreaking Session(分科会)が12会場で同時に行われることです。秋にシンガポールで開催されるAsia Conferenceでは日本からの会員がCall for Speakers(講演者募集)に応募しています。ぜひ、日本からも多くの会員に参加してほしいと思います。
第1日目午前中の分科会はAuditing An Anti-fraud World(不正防止監査)トラックの Michael Sherrod氏による”Building Your Company’s Fraud Taxonomy: Why is it Important?”に参加しました。彼はCapital One Financialという会社でCorporate Security ServicesのSenior Directorを務めています。Taxonomy(分類)とは聞きなれない言葉ですが、組織に関係する網羅的な不正手口を体系的に表したもので、手口ごとに記録を行い、セキュリティ、内部監査、コンプライアンス部などのユーザーで維持、共有していくものです。彼が中心となって会社のイントラネット上のTaxonomyのデータを維持し、監査部に対して不正に関する感性を鋭くする訓練を行っているそうです。
何時も思うのですが、日本の会社にはこの米国など他国の企業にあるセキュリティに匹敵する部署が不明確です。日本ではPhysical security、いわゆる保安業務が外注であることがほとんどであるため、社内で不正を未然に防ぐ、不正に関する通報があった場合や発覚した場合などに対応する部署と責任者がはっきりとしていません。総務部でしょうか?法務部でしょうか?監査部ではないですね?有事の場合には、企業の自浄作用として一刻を争う初期対応が必要です。独立した調査部隊として、素早く行動し、何時対外発表するのか、公的機関に報告するのかなどの責任者と手順を定めて、訓練しておくことが必要です。
午後の前半の分科会はThe Competitive Advantage of the CFE Certification.と題したパネル・ディスカッションです。モデレーターはFBIでInterview Techniqueを訓練もしているというJohn F. Kennedy UniversityのAaron Christopher VPで、パネリストにMedical Business AssociatesのCEOである Rebecca Bush、RITA Risk and Investigation Training AcademyのAnsie de Jager、ACFE UK Operation のDirectorであるTim Harvey、Booz Allen HamiltonのCommercial Financial Crime LeaderであるDaniel Tannebaumの4名です。各人のCFE取得に関する経緯を聞き、どの様にcareerに生かしてきたかを聞きました。会場の会員達のprofileを聞くと会計畑が8割、残りが法律と政府機関という構成でした。バックグラウンドにより、CFEとはいえ会計、法、心理学、面接など得意と不得意の分野があるので、会員間の連携が必要であることを認識しました。
午後の後半の分科会は、Ernst & YoungでFraud Investigation & Dispute ServicesのPartnerであるRoger Darvall-StevensによるEssential Forensic Investigative Techniquesに参加しました。彼の講演はACFEのカンファレンスでは定番となりました。今回は、法執行機関と民間企業での両方での経験をもとに有効な職場での調査についてのプレゼンテーションでした。様々な情報を収集し、調査、分析し、証人を探し、関連性と信頼度を基準に関連する事実のみを抽出し、証拠として採用するプロセスについて、ケースも使いながらの説明でした。
報告者 ACFE Japan 理事長 濱田 眞樹人