日時:2016年6月13日(月)~15日(水)
場所:ネバダ州ラスベガス
最終日3日目の分科会は、Finnegan's WayのPresidentであるCynthia Navarro(シンシア・ナバロ)による"Using the Internet as an Investigative Tool"に参加しました。これはインターネット調査ツールに関して、単なるGoogleサーチなどだけではなく、新しいサーチエンジンやSNSの使い方を指南してくれるセッションでした。
Open Source Information(公になっている情報)を検索する方法としては、一般的にはGoogle, Yahoo, MSN, Bing, Like, ... などを使用しますが、他国の情報を得る方法(イタリアならLibero Ricerca[※1]、ドイツならSuche[※2]など)、過去に行き着いた情報を再現する方法、テレビニュースのアーカイブ、米国の公的情報源、各国のSNS(中国ならSina Weibo[※3]など)、人間探し 、電話番号、住所の検索などの実演をしながら情報提供をしてくれました。特に通常の検索エンジンで検索できないDeep Web(深層ウェブ)に関する情報は次に表しておきます。
3日目の分科会後半は、Cotton & Company LLPのChairmanであるDavid Cotton(デビッド・コトン)による"The ACFE-COSO Fraud Risk Management Framework"に参加しました。昨日のレポートでも書いたように、2016年にCOSO(Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission、米国トレッドウェイ委員会組織委員会)とACFEは、不正リスクを考慮するための"Fraud Risk Management Guide as a supplement to COSO's Internal Control Integrated Framework (2013 Framework)"を公表します。2013年に改定となったCOSOフレームワークにおける17原則の8番目で"The organization considers the potential for fraud in assessing risks to the achievement of objectives."[※4]と、有効な内部統制のための不正リスクへの対応が明記されたのを受けたものです。2008年のIIA/AICPA/ACFEの"Managing Business Risk of Fraud (MBRF)"の改定の形を取りますが、25名のタスクフォースが作業を行っており、今夏には(80頁から280頁以上となり)公表される予定です。ACFE JAPANでは、これを入手次第、翻訳して会員にお届けする予定です。
今年のCliff Robertson Sentinel Award(1970年代にハリウッドの不正を告発したプロデューサーの名を付した、ACFEが不正と闘った告発者に贈る賞、クリフ・ロバートソン・センティネル賞、告発者賞)は、Anthony Menendez(アンソニー・メネンデス)に授与されました。彼は巨大な多国籍複合企業(CEOが米国副大統領に就任したことでも有名な)Halliburton(ハリバートン)で会計不正を内部告発し、9年間という長い期間を闘ってきました。"Bill-and-Hold Sales"、つまり、出荷しておらず請求だけで売上計上する会計に疑問を持った彼は、上司に話を持ち出しましたが、それが会社、そしてSEC(証券取引委員会)や判事との長い長い議論の始まりだったそうです。現在ではGMの子会社でControllerの職を得ていますが、彼の闘いが内部告発者の取り扱いに大きく影響を与えました。勇気を失わず、長い闘いを経て「ハリバートンをやっつけた会計士」となった彼に惜しみないスタンディングオベーションが送られました。
カンファレンスの最後を締めくくる基調講演者はRoomy Khan(ルーミ・カーン)です。毎年Convicted Fraudster(有罪判決を受けた不正実行者)を講演者として呼び、犯罪者が何を経験したのか、そして何を考えたのかを聞きます。ACFEは、Convicted Fraudsterには報酬を支払いませんが、多くの不正実行者に経験や教訓を話してもらい、共有しようとする姿勢には感心させられます。ウォールストリートで長い経験を持つ彼女はGalleonのインサイダー取引[※5]に関係し、フロリダ州Coleman(コールマン)の米国連邦刑務所に1年間の禁固刑となりました[※6]。彼女が禁固刑となったのは最低限の警備の矯正施設(Minimum Security Correctional Camp)ですが、生活内容はまったく通常の刑務所と同様です[※7]。経済犯とはいえ、犯罪人になるということによる人生の大きな変化とショックを語ってくれました。
今回のカンファレンスでも、基調講演や必要な参加者がいる分科会では手話通訳が提供され、耳の不自由な人への配慮、マグカップを配布して給水器を準備する環境への配慮がなされています。CPE(継続的専門教育)のレポートはモバイル機器のアプリケーションをダウンロードして、各セッション会場で発表されるPin Codeを入力して行います。また、現地で参加できなかった会員のためにオンデマンドでカンファレンスを視聴できるオプション[※8]が用意されました。毎回改善が進んでいます。
今年は、10月7日(金)に東京で第7回ACFE JAPANカンファレンスが、11月21日(月)~22日(火)にはThe 2016 ACFE Asia-Pacific Fraud Conference(ACFE アジア・パシフィック・カンファレンス)が香港で、それぞれ開催されます。来年のThe 28th Annual ACFE Global Fraud Conferenceはテネシー州ナッシュビルのMusic City Centerにおいて、6月18日(日)~23日(金)の日程で開催される予定です。日本からも一人でも多くの会員に参加していただきたいと思います。
最後に今回のカンファレンスのために作成されたビデオを紹介して筆を置きます。
Video: Welcome to the ACFE Global Fraud Conference
http://www.fraudconferencenews.com/home/2015/6/15/video-welcome-to-the-acfe-global-fraud-conference
ACFE JAPAN 理事長 濱田眞樹人