日時:2013年6月23日(日)~28日(金)
場所:ネバダ州ラスベガス
ACFEカンファレンス初日のワーキングランチのセッションでニューヨーク州南地区のプリート・バララ検事は次のように述べた。「歴史上、一般特に企業不祥事から得られる教訓は、誠実な(インテグリティー)文化は成文化できないということである。単に願うだけでも、最もうまく書き上げられたコンプライアンス方針を策定しても、どれだけよく練られた法制度があっても、どれだけ能力のある不正検査士がいても、インテグリティー文化を職場に浸透させることは難しいのです。」
バララ氏の生涯における不正の発見・抑止に対する貢献を称え、ACFE から名誉あるドナルド・クレッシー賞が贈られた。バララ氏は、観客に対し、不正関連の法律に捉われるだけでなく、一歩離れて不正を抑止するインテグリティー文化を醸成することを支援するべきであると述べた。「組織内で粉飾決算、数字の操作、顧客がごまかされている疑いを見つけたときに、進んで報告するよう組織内で定期的に警告を発しても、良心的な従業員に対してでさえも、通報を後押しする要因とはなりません。同様に、メールでリマインダーを送るだけでは、人に報告したり、警笛を鳴らしたり、助言を求めたりさせることはできません。」とバララ氏は述べました。
2012年タイムズ誌に「ストリート・ファイター」と称されたバララ氏は、インサイダー取引疑惑のあった世界最大級のヘッジファンドを運営していた億万長者の投資家であるラジャ・ラジャラタム氏とコンサルティング会社のマッケンジー・アンド・カンパニーの元トップであるラジャット・グプタ氏を積極的に起訴したことで評判を得た。さらに、ゴールドマンサックスの元役員やバーナード兄弟が犯したポンジースキームにおけるピーター・マドフなどの著名な事件を担当し、起訴をした。
起訴できたこと自体はやりがいがありましたが、この犯罪が明るみに出る前に、周りにいた従業員が届け出てくれたなら、もっとよかった、と彼は述べた。彼の事務所が担当した大きな事件の中には、「実にたくさんの、誠実で法律を順守する良い人が周りにいましたが、何か良くないことが起きていると知りつつも、実際に警笛を鳴らした人はいませんでした。」「では、通報者やセンティネル(監視員)、ACFEでは確かこのように呼んでいたと思いますが、をどのように行動を起こさせたらいいのでしょうか。たいていの場合、人は、反対の方向を向く傾向にあります。疎外されないように、事を荒立てず、同調し、仲良く、協力的に過ごします。この社会的な力に制圧されて正しい行動が起こせなくなります。行動を起こすには、勇気、言い換えれば度胸が必要です。」
「私たちは、人が不利益を被ることなくさらには報酬が得られて、安心して行動を起こすことができる環境をどのように作るか見つけ出さなければなりません。」バララ氏はこのように問いかけた。「自分が働く職場やコンサルティングを行う組織が、安心して倫理問題を提起できたならどれほど安心できるでしょうか。通報者は組織に守られるということが、マニュアルに記載されているだけでなく、組織内で徹底的に根付いていたらどれほど安心できたでしょうか。」
「同僚が倫理的義務を真剣に受け止めているか否かについては、どのように確認できるのでしょうか。通報者の不満が入念に調査されなかった場合、あなたなら何と言いますか?クライアントが、全ての情報を共有してくれなかった場合、あなたはどのような態度をとりますか。」
「どの企業にも応用できる長期的な解決方法は、異議を唱えることが自由に認められ、率直さが正当に促進され、インテグリティーが育てられ、さらには報酬も受けられる企業文化を醸成することです。言うは易し、行うは難しですが、腐敗した企業文化は、単にポリシーの制定や研修プログラムの導入だけでは、一夜にして立て直すことはできません。長期的かつ継続的なケアと育成が必要です。」彼はこう述べました。「私の仕事の一部であること同様、皆様や周りの同僚の仕事の重要な部分でもあると思うのですが、然るべき措置がとられなければ大惨事になるということを、山の頂上から叫ぶことで警笛を鳴らし、不正実行者の犯行を制限することです。」
FRAUD MAGAZINE 編集長 Dick Carozza