ラルフ・サマーフォードは開業にまつわるあらゆる喜びと陥りがちな罠を熟知している人物である。起業の達人であるサマーフォード氏が語る起業当初の苦労話や現在直面している課題から、我々は多くを学ぶことができる。
それは1970年のことだった。サマーフォードの同僚は皆、オフィスで険しい表情をしていた。間もなく、そのうちの何人かはいなくなった。時は不況の真っただ中で、多くの会計士が所属先の会計事務所を解雇されていた。しかし、サマーフォードは失業しまいと心に決めた。
「職が不安定だったことで、自分の運命は自分でコントロールしたいと思うようになりました。」最近のFraud Magazineとのインタビューで彼はそう述べた。そこで彼は事務所をやめ、最初の会社であるピアース・アンド・サマーフォード公認会計士事務所を創業した。これをきっかけに、CFE資格の取得、そしてフォレンジック/戦略ソリューションに極めて特化した企業の設立へと、彼の専門家としてのキャリアが始まったのである。1992年にたった一人の従業員、つまり彼一人で始めたその会社は、今やアラバマ州バーミンガム、テキサス州ダラス、カリフォルニア州ロサンゼルスに事務所を構え、サマーフォードは同社の株主兼代表を務める。
「最初の6カ月は自宅で働いていましたが、仕事がもらえそうな弁護士事務所がいくつもあるビジネス街(バーミンガム)に思い切って事務所を構えました。そして見込み客に電話をし、訪問することを日課にしていました。」とサマーフォードは話す。
彼は専門家の会合で講演するようになり、地元の出版物にも執筆をした。その結果、彼は固定客を獲得し、ビジネスを拡大していった。今では3つの事務所に従業員14人を雇用するまでになっている。同社は、不正検査、フォレンジック調査、事業評価、コンピュータ・フォレンジック、訴訟支援サービス、データ分析、経済的損害算出、統計分析、不正防止およびリスク評価、財政難に対応する専門家を派遣することに特化している。
同社は、原告、被告双方の弁護士、企業の取締役会および監査委員会、破産委員会、債権者委員会、保険会社の特別調査部、政府の検査官、政府機関などを顧客とする。
2006年まではサマーフォード会計事務所として運営していたが、2006年5月にダラス事務所を開所すると、ケリー・トッド(CPA/ABV)とマージー・ラインハルト(CFE、CA、CPA)を株主に迎え、社名をフォレンジック・ストラテジック・ソリューションズに変更した。
本稿の入稿直前に、ドン・マリナックス(CFE、CGFM、CIA、CGAP、CIG、CBM)がロサンゼルスの事務所長に就任し、また新しい株主ともなることが発表された。マリナックスは、ACFE理事会の元理事長で、4大監査法人のパートナーならびにロサンゼルス統合学区の監察官も歴任した。
従業員には、フォレンジック/評価スペシャリストのケヴィン・アンドリューズ(CFE、CPA、ABV)、フォレンジック・アナリストのリンジー・H・ギル(CFE)、コンピュータ・フォレンジック検査士のウェイド・モーガン(CEECS、CHE、ACE)、捜査担当取締役のアルトン・サイズモア・ジュニア(CFE、CPA)、管理者兼アナリストのダナ・S・スティーリー、管理者兼アナリストのメリッサ・ホーン、不正検査士兼訴訟支援専門家兼経済損害アナリストのジェフ・N・ウィンダム(J.D.、MAc)、書類の専門家でありアナリストのリチャード・プルイン、 フォレンジック・アナリストのサラ・マルコム、マーケティング専門家の リンジー・イゼルがいる。
不況にも関わらず、サマーフォードはCFEが開業することに必ずしも否定的ではない。なぜなら不正検査サービスの需要はいまだかつてないほど高いからである。弁護士、コンサルティング会社、政府機関、一般企業は、その組織の規模を問わず、不正検査の専門家を必要としているとサマーフォードは言う。
「経済環境がどうであれ、開業するのに最適なタイミングというのは特にありません。」とサマーフォードは語った。しかし、注意深く進むことが重要だと警鐘を鳴らす。「深い知識や経験、周到な計画、開業に際して必要な慎重さに欠けている人は、タイミングがよかったとしても事業を維持することはできないでしょう。」
サマーフォードは、バーミングハムの事務所からFraud Magazineの取材に応じてくれた。
不正対策の分野に足を踏み入れたきっかけを教えて下さい。
まず、私がこの仕事に今も昔も熱意を持っているからです。また事業計画を作成したとき、この分野では極めて多くの機会が得られることに気が付きました。私はCFEの資格を1993年に取得しました。今日ではCFEにとってのビジネスチャンスはさらに広がっていると思います。今やほとんどの法廷において、CFEは不正事件における専門家証人として認知されています。しかし1993年当時は違いました。専門家証人として認めてもらうためには、私は不正について知識を有する公認会計士ということをアピールしなくてはなりませんでした。それ以降大きな進展がありましたが、ACFEが1988年に本格的に取り組み始めた不正対策分野での活動はまだまだ発展の余地があります。
最初の事業を始めたときの環境はどのようなものでしたか。
1972年に、私がパートナーと従来型の公認会計士事務所を始めたとき、成功への欲望と理想そして野心には満ちあふれていましたが、事前準備はほとんどしませんでした。幸いなことに、セールス研修を行うコンサルティング会社をクライアントに持ち、その会社から我々のサービスをどう売り込むかについて助言をもらいました。
私は1985年にその会計事務所の所有権を売却し、その年の後半にオートバイ、オフロードカー(ATV)事業を手に入れ、形ばかりの事業計画を作成しました。残念ながら、その計画を完成させないまま開業しましたが、私は、2つの重要事項の事前チェックを怠るという致命的なミスを犯しました。まず、ドル円相場の見通しを検討していませんでした。もう1つは、米国消費者製品安全委員会が1987年に3輪オフロードカーの販売を禁止したことです。3輪自動車の販売は私の新規事業の70パーセント以上を占めていたのです。この規制は、同業界を長らく崩壊させたのです。
私は失敗から多くを学び、1992年にフォレンジック会計事業を始めたときには、事業計画を入念に立て、その計画は上手くいきました。その計画書は今でも私の手元にあり、現在の事業において戦略を計画立案する際の手本として使っています。
不正検査/フォレンジック会計事業を始めた最大の理由は何だったのでしょうか。
このサービスに対する需要が尽きることはありません。仕事自体が非常に魅力的ですし、真のフォレンジック専門家や法律家と仕事をする機会が得られます。また精神的な刺激も多く受けます。毎日が新鮮で、ケースごとに異なる課題に取り組むことができます。毎日ベッドから起き上がり仕事に行くのが楽しくてしかたありません。
CFEとして開業するためには、どのような性格特性や実務経験、スキルを備える必要がありますか。
必要な性格特性は、専門とする分野によって異なります。もし専門家証人として活躍したいのであれば、精神的な強靭さやずぶとさ、弁護士とやりあえるタイプAの性格が求められます。弁護士があなたの証言の信ぴょう性を上手く攻撃できなければ、あなたの専門性を否定する作戦に出ることを受け入れなくてはなりません。
サポートやコンサルティング業務を志すのであれば、その事業を完璧に理解し、卓越したスキルを発揮できるテクニシャンでなくてはなりません。たとえ報告書の締め切りが昨日で、報告書作成に10時間もしくは80時間かかるときでも、仕事が完了するまで粘り強く取り組む能力を持たなくてはなりません。
また、専門家らしい服装も大切です。控えめなビジネスウェアが無難でしょう。当社では実際、新入社員のためにいかに専門家らしく振る舞うかについての講習を行っています。良い第一印象を与えるチャンスは一回だけなのですから、最初に損をする手はありません。
開業するにあたってCFEが最初にすべきことは何でしょうか。
繰り返しになりますが、事業計画を入念に立てることです。ほとんどの人が人生計画を練るより、休暇の計画を立てることにより多くの時間を費やしています。事業計画を立てようと軽く考える人はいますが、そのほとんどが未完成のまま終わります。しかし事業計画を練る過程で、アイディアは達成されるものです。事業計画のためのソフトを購入すれば、事業計画も「オズの魔法使いの黄色いレンガの道」をたどるように簡単に作れます。この作業には献身的に情熱を持って取り組まなければなりません。事業を片手間にやるものとして扱ってはいけません。また、何にも増して、落とし穴に落ちないように助言してくれるメンターを探しておくことです。私自身経験豊かな専門家に指導してもらい、悲惨な目にあわずにすみました。
創業する際にCFEはどのような社外弁護士をもつべきでしょうか。
CFEは企業弁護士が必要です。訴訟や離婚、証券などを扱う弁護士ではなく、企業の組織構造について理解し、州際業務についてCFEに助言できる人物が望ましいです。私たちの事業は国際的とは言えないまでも、全米を網羅しています。途中で1からやり直しとならないよう、適切な組織体制でスタートすることが大切です。そして、繰り返しになりますが、助言者として信頼のできるメンターをもちましょう。
事業を始めたとき、顧客開拓と不正対策業務の拡大にどのように取り組んだのですか。どのような事業開発戦略が上手くいき、どのようなものが失敗に終わったのでしょうか。
私が1992年にフォレンジック会計事業を始めたとき、税務、監査などの従来のサービスには手を出さず、フォレンジック会計に専念しようと心に決めました。当時は、フォレンジック会計は法医学会計(訳注:forensic accountingのforensicには「法医学的な」という意味あり)と思われ、亡くなった人のための会計サービスだと思っている人までおり、私は我々のサービスを理解してもらえるよう、営業先を教育しなければなりませんでした。
営業活動には、広告宣伝、広報、人脈作りがありますが、私には広告宣伝をする余裕はなかったので、広報と人脈作りに専念しました。これは現在でも役に立っています。
私は地元で開かれる専門家の会合で講演するようになり、地元の専門誌にも記事を投稿しました。これらの活動は営業活動の一端として成功しました。その後、広告を出そうとしましたが、高額な割に十分な効果が上がらず、上手くいきませんでした。出版会社の会報誌にて当社のサービスをアピールし、見込み客を獲得しようともしましたが、これもダメでした。
御社はフォレンジックおよび戦略サービスにおける10分野を専門としています。これから事業を経営しようとしている人は、最初に取り扱う分野や成長が期待される分野をどのように見極めればよいでしょうか。
原点に戻りましょう。当社も最初から10種類もの業務を請け負っていたわけではありません。スタッフが増え、専門分野も拡大するなかで、取り扱う分野が増えていったのです。企画会議を重ね、何をやっていきたいかという戦略的目標を定め、その方向に向かっていきました。恐らく、犯し得る最大の過ちは、あらゆるサービスをすべての顧客層に提供しようとすることです。先ずは、自分が最も得意とし、熱意をもって取り組める分野から始めなくてはなりません。そして事業が成長し事業拡大を望むならば、そこで戦略的立案に取り掛かればよいのです。事業計画を立てるときのように(戦略的計画はその一部であるわけですが)、自社の中核事業を評価しそれらを発展させます。そのうえで、新たな事業を加えたり、場合によっては、一部を切り離したりするのです。
御社が提供するサービスの中で、一番人気のあるのは何ですか。
コンピュータ関連のフォレンジック・サービスです。不正検査、不正評価、データマイニング、データ分析、あるいはそれらの組み合わせとして提供します。当社はデータマイニングに高い専門性をもっています。元データを取得し、電子媒体が何であろうとその跡を追跡します。電子媒体は、コンピュータが一台の場合もあれば十数台のときもありますし、ネットワークサーバ、携帯電話、その他の周辺機器の場合もあります。訴訟支援も当社の主要業務です。複雑な財務取引の説明、不正事件、契約上の問題、不法行為に対する賠償請求などに係る経済的損失額の確定において、弁護士を支援するサービスです。
御社の顧客や見込み客から問い合わせがあるサービスは主にどのようなものですか。
訴訟に巻き込まれたり不正で苦い思いをしたりした個人や企業は、まず弁護士に相談しますので、弁護士経由で受ける仕事が一番多いです。時折、法人や政府機関、個人から直接依頼を受けることもあります。不正検査では、顧客は不正が実際に起きたかどうか調べて欲しいと依頼してきます。そして、起きていた場合には、今度はその立証を支援するよう依頼されます。私たちは損失計算、発見した事項に関する証言、訴訟支援などを行います。
どのようにして事務所をさらに2ヶ所も開くことができたのですか。
まずは、当社のビジネスモデルのおかげだといえるでしょう。10年以上勤続しているケリー・トッドは、ビジネスモデルを構築し、一連の作業を軌道に乗せ、我々に成長を確信させてくれた、正に当社の原動力となった人物です。ケリーと私はマージー・ラインハルトと5年以上前から知り合いで、彼女がダラスで起業を考えていることを知ったとき、ダラスにも進出しようという流れに自然となりました。
ダラスへの進出で当社のビジネスモデルが他にも適用できることが証明され、私たちの戦略計画に合う新しい人や場所、サービスについて考え始めました。学校制度と政府機関に焦点を絞ったところ、ドン・マリナックスにたどり着きました。ドンはロサンゼルス統合学区の監察官室を統括していた1990年後半に当社の顧客だった人物でした。私が彼へ電話をしたとき、彼は務めていた監査法人を退職するつもりだと言いました。それが、私たちがロサンゼルスに進出するきっかけとなったのです。私たちの成功の鍵となったのは、自社の強みと進むべき方向性を知ることに焦点を絞った真の戦略を持っていたことです。私たちの事業はまだ始まったばかりで、刺激に満ちた毎日を送っています。
我々が現在直面している不況を考慮すると、今は「看板を出す」には良いタイミングなのでしょうか。
経済環境がどうであれ、開業するのに最適なタイミングというのは特にありません。深い知識や経験、周到な計画、事業に際して必要な慎重さに欠けている人は、タイミングがよくても事業を維持することはできないでしょう。サーベンス・オクスリー法によって生み出された内部統制関連業務が良い例です。多くの人がその分野に飛び込み、自称「フォレンジック会計士」と名乗りました。しかし今ではSOX関連の仕事はほとんどなくなってしまい、彼らは新しい分野を模索中です。しかし、彼らはその分野に対する準備も十分せず、フォレンジックの専門家が本来備えるべき知識も持ち合わせていません。
SOX法の話が出ましたが、同法の施行により、顧客へのアプローチは変わりましたか。
株式公開企業にSOX法の法的要件を指導するのは簡単です。非公開企業については、SOX法対応をベストプラクティスとして挙げることができます。SOX法導入を受けて、米国公認会計士協会は公認会計士が非公開企業に提供するサービスの倫理規程を改定しました。新しい倫理規程は基本的に、「キツネに鶏小屋の番をさせない」つまり、顧客に監査証明を提供する公認会計士は、同じ顧客にフォレンジック・サービスを提供できないとしています。SOX法と米国公認会計士協会によって利益相反に関する問題が浮き彫りにされました。不正検査士である我々は、これらの努力を称賛すべきでしょう。そして顧客に利益相反の問題を回避する必要性を強調しなければなりません。
新規に雇用する人材にはどのような特性を求めますか。
スタッフレベルの従業員社には、フォレンジック会計士として働くことに熱意を持ち、さらに勉強をしようとする意欲がある人物を求めています。特に大学でフォレンジック関連のコースを修了している人物には好印象を抱きます。
収益的に厳しい時期にはどう対応してきましたか。
このビジネスのキャッシュフローには、厳しい時期が付き物です。事業計画にその時期を見込んでおくことで、資金繰りが厳しいときも事業を円滑に進められるようにしています。
創設者兼チェアマンのジョセフ・T・ウェルズ(CFE、CPA)の指揮の下、ACFEは当初から、不正対策は防止と抑止が重要であると強調してきました。あなたはこの点をどのようにして顧客に強調していますか。ずさんな経営管理の報いを受けるよりも不正の未然防止に積極的に取り組むべきだと企業を説得するのは難しいことでしょうか。
ほとんどの企業が不正の防止や抑止のためにはコストをかけたがりません。そこで当社ではサービス提供後のフォローアップとして防止・抑止の重要性を強調することにしています。これは自然な成り行きです。残念なことですが、一度不正や濫用で苦い思いをしないと、企業は防止や抑止のために積極的な投資はしないのです。私の知っているCFEの1人は、内部監査人や経営者レベルの人脈を活用して、不正対策サービスの推進に成功している人もいます。
不正検査の国際性が重視されるようになり、御社の戦術はどのように変化しましたか。
不正検査のビジネスで重要なのは人脈作りです。そこで、ACFEの会員であることが大いに役に立ちます。国際的あるいは広範囲をカバーする案件を受けた場合には、当社は現地の法律や手順に詳しいCFEや不正検査士と協力します。市場が国際化した今日では、すべての法規や文化的慣習を熟知することは不可能です。
中小企業の経営者として最大の課題は何ですか。
当社が戦略的に重視している業務分野に影響を及ぼす、すべての問題を把握すると共に、最新の規制や基準にも精通することです。さらに、州によっては事業に対して時代遅れの規制が残っているところもあり、対応に苦慮することもあります。
創設間もない頃は、とにかく会社を存続させることが第一の課題でしたが、今ではそれを可能にする人材と業務プロセス、そして手段を有しています。
不正に関して、今後注視する必要のある問題は何ですか。
不正対策専門家のトレーニングは引き続き不可欠重要です。ACFEはこの分野において素晴らしい貢献をしています。当社社員のうち4名がACFEで教鞭を執っていることを大変光栄に思います。トレーニングは重要ではありますが、どんなものでも良いというわけではありません。私たちはACFEと緊密に連携して不正のための特別なトレーニングを用意し、ACFEが政府機関のためにプログラムを立ち上げるのを支援しました。その結果、より多くの人が不正を防止、発見、調査するための訓練が受けられるようになりました。その他の問題としては、当社の戦略的焦点ではありませんが、多額の遺産を相続するベビーブーム世代を狙った犯罪があります。新手の詐欺やインターネット関連の不正も注視しなければなりません。
ACFEが提供するトレーニングはあなたの事業にどう役立っていますか。
ACFEのトレーニングはなくはならないもので、正に当社の事業基盤となっています。ACFEを通じて、データマイニング、コンピュータを利用した犯罪、調査など、ありとあらゆるものについて学びました。さらに不正検査は人脈作りが物を言うビジネスです。1人のCFEがあらゆる人のニーズに完璧に応えることなどできません。ACFEメンバーであるおかげで、私たちは50,000人近くもの国内外の不正対策専門家と繋がることができ、共通の話題を持ち、情報を共有し、助けを求めたり、仕事を紹介したりすることができるのです。
中小企業を立ち上げる際の実務的なアドバイスをお願いします。例えば、法人格の選択と法的保護、法律顧問、専門職責任保険、手数料体系、顧客への請求と回収、雇用、従業員の福利厚生など。
有限責任会社(LLC)や専門家法人(PC)であれば保護が受けられます。可能な限り良い顧問弁護士を探し、助言を仰ぎましょう。
専門職責任保険は保護される内容を考えれば安いものです。ただし、開業したばかりで守るべき資産がほとんどなければ不要かもしれません。
手数料については、あなたが活動する地域の市場を調査し、妥当な水準で設定しましょう。時間単位で請求し、顧客の承認を得て予算を設定し、こまめに見直し、更新してください。少なくとも一ヶ月分の見積額を前払いして頂き、請求の際に精算するとよいでしょう。2週間ごと、最低でも月に一度は請求書を発行します。
契約書、手数料に関する合意書、または、報告書提出や証言をする前に支払いがされることを明記した誓約書が必要です。適時に支払がされない場合は作業を中断しましょう。
従業員には敬意をもって処遇し、報酬の一部としてあなた自身が望むような福利厚生を提供しましょう。私は競合他社より従業員に良い給料を払い、功績に対してはインセンティブを与えています。従業員の給与を毎年、そして契約を完了する度に定期的に見直しましょう。
私は、給与は「不満の種」だと思っています。つまり、従業員に満足の行く給与を支払い、労使共に、就業環境を含めたその他の側面への対応に集中できるようにしなければなりません。
私たちは従業員に投資し、コンピュータやソフトウェア、トレーニングなどのツールを提供することが、素晴らしい仕事に繋がると信じています。また、経験の浅い従業員には細かい指導と慎重な監督が必要です。
開業する際には誰も教えてくれず、苦労して得た教訓を共有していただけないでしょうか。
助けるといって実際には助けてくれない人が多いですが、思いがけない人が助けてくれるものです。また、もしセールスポイントとなるような技術がなければ、習得しなければなりません。
開業しようとしているCFEにアドバイスをお願いします。不正対策ビジネスで成功するための最も重要な要素は何でしょうか。
2003年に、ACFEから正にこのテーマについて講座を作らないかと持ちかけられ、共同で「不正検査ビジネス開業のノウハウ」を開発しました。それ以来、私は1回を除いてこの講座のすべてを担当してきました。もし講座に参加できないようならば、ここで述べたことに加えて、動機付けのうまいジム・ローン氏の講演を聞いて、彼の賢明なアドバイスを聞き入れること、そして仕事をする以上の時間を自分啓発に充てることを勧めます。
ディック・カローザ
Fraud Magazineの編集長である。
コラム1
自らの経験を伝授するサマーフォード氏
ラルフ・Q・サマーフォードの相手を微笑ませる笑顔と親しみやすさは、彼のトレードマークである。彼はACFEのセミナー「不正検査ビジネス開業のノウハウ」で何百人もの受講者を教え、その他のセミナーやACFEの年次総会でも多くの講演をしている。
「CFEとして学んだことを教えるというのは、この職業における最高の喜びです」とサマーフォードは語る。「私の会社で役に立った方法を若き不正検査士たちが学ぶ姿を目にするのは素晴らしいことです」
1997年からACFEで講師を務めるサマーフォードは、大学で客員講師も務め、また、ロサンゼルス統一学区や世界銀行、ナスダック、連邦預金保険公社、北大西洋条約機構(NATO)などの多くのセミナーやプログラムでも教えている。
彼はACFEの理事会で副理事長を3年間務め、 職業基準および実務委員会元委員長、審査会元会長でもある。
サマーフォードはアカウンティング・トゥデイ、プレベンティング・ビジネス・フロード、フィナンシャル・フロード、ボルチモア・スマートCEO、バンク・フロード&ITセキュリティー・レポートの各誌、そしてFraud Magazineへの執筆経験を持つ。
2004年には、アラバマ州バーミンガムの年間経営者大賞の最終選考に残った。また、バーミンガム・ブロードウェイ・シリーズのディレクター、バーミンガハムYMCA理事、グレーター・バーミングハム脳性麻痺連合会取締役なども歴任している。
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コラム2
ACFE講座「不正検査ビジネス開業のノウハウ」
(“Building Your Fraud Examination Practice”
©2008 Association of Certified Fraud Examiners)より抜粋
企業の発展に不可欠な強固な事業計画
事業計画とは、あなたの会社の概要と将来への展望を記載した書類で、資金の貸し手、出資者、共同経営者になる可能性のある人物などに提示されます。企業家精神旺盛なCFEにとって、事業計画は構想から事業成功への道筋を示した地図のようなものです。
なぜ事業計画が必要なのか
事業を成功させ利益を上げるためには、業界動向や市場における自社のポジショニングについてできるだけ多くの詳細情報を収集し、理解しなければなりません。事業の使命、目的、資金源、人材は事業成功の決定要因の一部にすぎないのです。
事業計画を作成する目的は、出発点から到達目標までの道筋をつけ、到達点に留まり続けることを可能にする方法を見出すことです。
多くの政府機関や企業はCFEを監査人、調査官、アナリストなどとして登用していますが、あなたが提供するサービスの必要性を彼らに納得させるためには、大胆かつ包括的な計画を書き上げなければならないでしょう。
将来、あなたの顧客、資金の貸し手または出資者になる可能性がある人には、職業上の不正および濫用の多くは、大企業ではなくて中小企業で起こっていること、そしてあなたがそれらを防止し、発見し、抑止するスキルを有し、また訓練を受けていることを伝えなければなりません。
銀行はあなたに融資をする前に事業計画を要求することがあります。投資家やベンチャーキャピタルもあなたの会社への出資を検討する際に事業計画を必要とします。事業計画を作成することを義務だと思わずに、長期目標を達成するための大切な機会であると捉えて下さい。
事業計画を作成すると以下のような機会を得ることができます。
- あなたの会社が属する業界や市場についての理解を深める。
- 事業を掌握する。
- 競争力を高める。
- 事業活動と結果を絞り込むための重要な決断を下す。
- キャッシュフローや損益分岐点などの財務状態を理解する。
- 重要な市場情報、産業情報を収集する。
- 遭遇し得る障害を予期し回避する。
- 事業の進捗度合いを評価するための具体的な目標と測定基準を設定する。
- 新たな収益性の高い分野へ事業を拡大する。
- 資金提供者への説得力を高める。
典型的な事業計画に含まれる主な項目
- 目次
- 要旨
この短いセクションで、計画の要点をまとめます。必要な情報を得るために要旨だけを読む人もいますので、要旨は包括的な内容にしなければなりません。
- 会社概要
会社のビジョン(目指す姿)、ミッション(使命)、バリュー(重視する価値観)の記述、サービス概要や特長などを記載します。明確かつ簡潔に書きましょう。
- 事業環境
業界、市場、競合他社、顧客の分析などが含まれます。
- 組織体制
経営陣、事業運営、市場の将来性についての詳細な情報を明記します。競合他社と比べた長所、例えばCFE資格保有者であることやACFEのトレーニングを受けていることなどを強調しましょう。
- 事業戦略
これはあなたの計画に基づいてA地点からB地点までどのように到達するかを示した簡単な地図のようなもので、それが最善のルートであることを説明しなければなりません。他の選択肢も考え抜き、予期せぬ困難や機会も考慮した結果であることを示しましょう。
- 財務概況
財務諸表の詳細を示し、現状と将来の見通しを明確に説明して下さい。簡単な表やグラフを挿入するとよいでしょう。
- 行動計画
計画を実践するための戦略を記載して下さい。最初にどのようなステップを踏むかが肝心です。過度なくらいに現実的な内容とするよう心掛けてください。
- 付録/別表
報告書、記事、スプレッドシート、法的文書、調査結果など、計画の内容を裏付けとなる資料を盛り込みます。
事業計画は、用途に応じてミニプラン、ワーキングプラン、プレゼンテーションプランに分けられることがあります。PDF、パワーポイントなどの電子ファイル形式で提出することもできます。
ミニプラン
ミニプランは、1ページから10ページ程度の長さで、事業のミッション、目的、資金の必要性、マーケティングプラン、財務諸表について言及しなければなりません。この形式は、事業構想を短時間で査定したり、共同経営者または小口投資家の候補者の興味を測ったりするのに最適です。すべてを記載したプレゼンテーションプランの簡略版として作成することも可能ですが、代替することはできません。
ワーキングプラン
これは、日々の事業運営を進めるためのツールです。あなたを継続的に導く設計図のようなものですので、定期的に事実や数値を更新しましょう。あなたの計画や業界の状況の変化に応じて、書面の内容も常に変わります。
これは社内向けのプランですから、形式にこだわる必要はありません。社外向けのプランには必要不可欠な事項も適宜省略できます。写真や会社の沿革、経営陣の経歴書などは不要です。業界特有の専門用語や社員が使用する略語などを用いても問題ありません。
プレゼンテーションプラン
これはワーキングプランから社内向けの情報を除き、銀行、投資家、共同経営者の候補者などの社外関係者が読むに相応しい美的センスと専門性を備えた形式のものです。プレゼンテーションプランは通常きちんと印刷、装丁されます。
明確かつ専門的な文体表現で書きましょう。読み手を感心させ、興味を引くことがこの文書の趣旨です。俗語、略語、業界用語は用いず、一般論は避けてください。
各章の長さはできるだけ短くしましょう。プランの長さに関わらず、補足的な記述や情報は添付資料か別表に表示します。
投資家が求めるデューデリジェンスの結果、競争に関する脅威とリスクについての情報、新規事業にとって不可避なリスクを低減するための計画を明記してください。図表やイラスト、経営者の略歴と写真も加えましょう。
反論の余地のない具体的な情報を用いなければなりません。それぞれの主張を信頼できる事実で裏付けます。最新のACFEの「職業上の不正と濫用に関する国民への報告書」などを参照しましょう。
プランには誤字や誤記は許されません。投資を考えている人は誤記を意図的な虚偽表示だと解釈するでしょう。開業を目指すCFEがこの段階で誤りを犯していては、今後顧客となる企業の事業上の不正や誤謬を発見するという目的達成できないでしょう。
サービス提供者
有料で事業計画作成支援サービスを提供している会社もあります。以下に3社を挙げます。
- ビジネス・プランニング・インスティテゥート www.bpiplans.com
- HJベンチャーズ www.hjventures.com/bpc.html
- ビジネス・プラン・ドットコム www.businessplans.com
事業計画作成ソフト
事業計画作成支援ソフトも多数あります。4つの例を以下に示します。
- ビジネス・プラン・メーカー www.business-plan-maker.com
- ビジネス・プラン・プロ www.paloalto.com/business_plan_software/
- プランマジック・ビジネス10.0 http:/planmagic.com/business_planning.html
- プラン・ライト www.brs-inc.com/
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