2012 年 8 月 8 日、沖電気は、海外連結子会社における不適切な会計処理が判明し、外部調査を実施することを公表した。そして、その調査結果
が 9 月 11 日に明らかになった。
この不適切会計により、平成 24 年 3 月時点で 675 億円あったはずの純資産は、412 億円へと 39% の減少となった。当然、沖電気の株価も下落。不
祥事が公表された 8 月 8 日前後で、122 円から 72 円へと 40% 以上下落し、時価総額は 360 億円以上の減少となった。
オリンパス事件以降、海外投資家からの日本の上場企業の財務諸表調査の依頼が増えている。その際に伝わるのは、「ガバナンスは大丈夫か?」「隠
れ不正はないか?」「営業権などの資産評価は適正か?」という懸念である。
そして、その背景に「オリンパス事件」「大王製紙事件」を含めた近時の日本の不正事件がある。また、社外取締役設置の義務付けなどの、世界的に見て分かりやすいガバナンス制度の導入の見送りが、その不信感を増長させている。日本の株が上がるか下がるかは、海外投資家次第である、と言われ
始めて久しい。米国の株価は、既にリーマンショック後の高値を更新するほど回復しているにも関わらず、日本の株価は低迷し、反転する兆しもない、その原因に、日本企業の「企業統治」「不正対策」への海外投資家の不信感が影響している可能性は否定できない。
そのような中、2012 年 9 月 19 日、アジアン・コーポレート・ガバナンス協会は、CLSAアジア・パシフィック・マーケッツとの共同調査に基づき、2012 年度のアジア企業統治ランキングを発表した。この調査によると、日本の企業統治は、2010 年実施時より 2%評価を下げ 55%となった。 その結果、前回よりも評価を高めたシンガポール(1 位)、香港(2 位)との差が拡大し、タイ(3 位)に逆転され、マレーシアと同順位の 4 位に後退した。日本の企業統治に課題があることが、データ的にも確認されたのである。
超円高、世界同時不況の中、各企業とも業績改善により株価を回復させることは容易ではない。しかし、「企業統治」「不正対策」の改善は、他社との競合や世界不況に大きな影響を受けずに、企業の意思で実行していくことができる数少ない領域である。今こそ、世界基準で投資家に理解され評価される「世界一流の統治」「不正対策」を、そして、世界中から投資資金が集まる日本の株式市場の再生を目指して、新たな挑戦を始める時である。
ACE コンサルティング株式会社代表取締役 公認会計士、公認不正検査士
ACFE JAPAN 理事