2005年4月にスタートした当協会も、この4月で9年目を迎えた。当初17名でスタートした会員組織も、本年4月1日時点では1103名を記録した。この人数が一般的にみて多いか少ないか、という議論はさておき、千名を超えた時にはようやく組織の体を成してきたと実感したものである。 想えば、この組織に出会ったのが2003年。今から10年前である。当時、私はリスクマネジメントを担う責任者を育成する組織を立ち上げようと していた。そこで教育プログラムの参考にしようと、国内外の関連するような組織を調べていた時にこの ACFE に出会った。当時はまだ3万人にも満た ない協会であり、日本ではほとんど知られていない組織だった。
直観的に、この協会こそ私が作らんとしていた組織であると思い、急ぎ部下を連れて本部のあるテキサスまで乗り込んだ。そこで、「この組織を日本で私にやらせてくれ」と当時の会長であったトビー・ビショップ(TobyJ.F.Bishop)に直談判したのを思い出す。それから正式な契約調印まで2年を要した。決断を躊躇する本部に対して、「何かあれば責任は私が取る」と断言した翌日に、調印をするので本部に来てほしい、という連絡を受けた。
昨年ようやく千名に到達したのだが、ここまで来るのは決して楽な道のりではなかった。組織内に起こり得る「不正」というセンシティブな問題に正面から取り組む協会であるため、当初はなかなか企業の理解を得られない。“ウチに限って” ということである。そのため会員がなかなか増えず、協会の収入がほとんどないなか、それでも米国本部に支払うロイヤリティを捻出しなければならず、教育プログラムの質も本部が要求するレベルを維持しなければならない。
協会運営は非常に厳しい状況が続き、当時の担当責任者も逃げ去る中、私がなんとかこの組織をやってこられたのは、やはり早い段階からこの協会の意義と将来性を感じてくれた会員の皆様の温かい応援と、八田先生を中心とする評議員の先生方のご指導のお陰である。
お陰様で、この協会も現在は一般社団法人として法人格を持つこともできた。不正対策の必要性もそれぞれの組織の中で真剣に取り組みが始まっている。金融庁企業会計審議会では、監査における不正リスク対応基準の設定に乗り出した。人は完璧ではない。人が組織を構成している以上、不正や不祥事はどんな組織でも必ず起こり得る。それに対処する不正対策の専門家はすべての組織に必要である。私たちの存在意義は今後ますます重要になっていくと思われる。さらに充実した活動ができるよう、新年度を迎えて思いを新たにするものである。
株式会社ディー・クエスト 代表取締役
公認不正検査士
ACFE JAPA N 理 事